第2章 魔女のオペレッタ 2024/08
最後の物語:軋む在り方
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げた刃の厚い包丁を思わせる武器。日本人離れした顔立ちは例えピニオラでなくともSAOプレイヤーであれば一人の人物を思い浮かべるだろう。
――――殺人ギルド《笑う棺桶》のリーダー、《PoH》と。
「その先輩ってのはよせよ。柄じゃない」
「くふふっ、柄にもなく照れてますねぇ。………じゃあ《王子様》が良いですかぁ?」
「………殺されたいなら好きにしろ」
「あらあらぁ、怒っちゃいましたねぇ〜………で、ご用件はなんですかぁ? まさか女装用の装備を探しに来たわけじゃないですよね〜? もし図星でしたらぁ、くふふふ………わたし、見繕っちゃいますぅ?」
「……………話がある。時間は取らせない」
「まぁ、聞くだけ聞いてみましょうかねぇ〜」
一頻りの雑談を終え、本題へと移行する。
その間隙に、PoHはみことを一瞥するがピニオラがすかさずローブで顔まで覆ってしまったため、邂逅は一瞬で幕を下ろす。それでも彼の口の端に笑みが浮かんだのも事実だが。
「攻略組の連中が、俺達の根城について嗅ぎ回っているらしい。一応、お前等に動向を探ってもらいたい」
「そんなお話をセンパイ直々に聞かせに来たんですかぁ? いつも通り、腰巾着さんが伝言役でも済むような気がしますけどねぇ?」
「たまたま近くだったからな。いちいちメールを送る手間を考えればずっと楽だったのさ………それと、仕事をサボるメンバーへの釘刺しを含めて、な」
「………まぁ、そういうことにしましょっかぁ〜」
「話は済んだ。ショッピングの最中に水を差して悪かったな」
「悪いって思うんなら荷物持ちくらいしてくださいよ〜。ジェントルマンの嗜みですよぉ?」
「それこそ俺の柄じゃない。ストレージにでも詰めとけ」
言い捨て、用は済んだとばかりにPoHは店内から去る。
それを見送りつつ、ピニオラは懐で震えるみことの頭をそっと撫でつつ、努めて穏やかに声を掛けた。
「今の人、怖かったですかぁ?」
「……………………………」
みことは声を発さない。まるで外敵を察知した小動物のようにひっしりとピニオラの腰にしがみついて、ローブから一歩たりとも踏み出そうとしなかった。返事といえば、密着した頭が縦に振られているのだろうと肌で感じるくらいだが、それもまたピニオラにとっては興味深い《みことの素質》を実感する根拠となった。
第一層とはいえ、誰の手も借りずたった一人でこの世界を生きたのだ。
殺人ギルドの首魁の危険性を即座に感じ取る超然的な感性は、それだけでも生き延びるに足る素養。どこまでも尽きない興味を今は押し殺して、怯えきった少女を落ち着かせるように再度頭を撫で続ける。
「大丈夫ですよぉ。もうどこか行っちゃいましたからねぇ」
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