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奈緒あふたーっス!!
奈緒あふたーっス!!02
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「そんなことより、もう着いちゃいますよー」

「そんなに歩いてきたのか」

「有宇くんがボーッとしてるからですよ」

「だね」

今日は僕と奈緒の初デート。

なのだが、そこに奈緒の兄である一希が加わっている理由は、とある人物に会うという目的も含まれているからである。

そしてその人物とは…

「うおおおおおおお!!スッゲえええええ!!!マジもんじゃねぇっスかあああああ!!!!!!」

興奮する兄一希の視界の中にはただ一人の女性だけが映っていて、それ以外は己の世界から消えている。

と想像するに難くないほどの熱が彼から放出されている。

そしてその先にいるのは…

「ウィーッス。ZHI ENDのボーカル、Sara Shaneでーす」

その時バクン!!!という激しい音と共に心臓が揺れ動くのを感じた。

僕はこの人を知っている。

いや、勿論記憶には無いのだけれど感覚的に分かる。

澄んでいるのに重低音を響かせ、果てしなく遠い彼方まで届くような水平で孤独なこの人の声を僕は憶えている。

神経が激しく波打つ感覚がだんだん小さくなり、やがて血液は平常通りのトクン、トクンという脈を打つ程に冷静になる(精神統一の能力の助けもある)。

「あ、あの…あなたは…僕を知って…いますか?」

言葉通り喉から出そうな程に前傾姿勢になり、少しよろめきながら右腕を伸ばすが、彼女の胸元僅か数センチ前で空を切る。

酷く喉が渇いて息が切れる。

瞳孔を開いたままの僕を見て(彼女は目が見えなかったのだが、この時の僕はそれを知るはずもなく、お互いに目を合わせていると感じていた。)彼女は微笑んだ。

「あぁ。知ってるとも、なぁ兄弟(ブロ)」

彼女は僕の肩に腕を回すと耳許でその籠る声を音は小さく、しかしはっきりと響かせた。

「え…」

「ええ!?有宇くん、Saraさんとは知り合いだったのか!?」

僕の動揺している声を一希がかき消すほどの声量で叫ぶと、Saraはチロリと舌を出して僕と奈緒を一瞥してから続けた。

「いいや、アタシはただアタシらのバンドを好きな奴等はみんな顔馴染みって言いたかっただけさ」

「おお!!!じゃあ俺とも知り合いってことっスね!いやぁ超感動っス!!」

一希が騒ぎ立てる中でSaraは有宇の肩に腕を回しながら、また耳許で呟いた。

「ライブが終わったらアタシ
らの楽屋に来な。マネージャーには話を通しておくから」

「え?」
「ん?」

よく分からない僕とあまりよく聞き取れなかったらしく首を傾げる奈緒をその場に残し、その人は片手を振って振り向かずに歩いていった。

一時間程経った頃ライブが始まり、覚えているのはやたら一希のテンショ
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