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魔王に直々に滅ぼされた彼女はゾンビ化して世界を救うそうです
第9話『──ごめんな』
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 分からない。分からないんだ。
 なんで、そんな事だけであそこまで出来るんだ。なんで、魔族である筈の君がそんな感情を抱いているんだと。
 そんな声も、驚愕で言葉にする事は出来なかった。



『W──ひとのことが すきだから──W』



 ──『人』の事が、好きだから。

 たった、それだけ。

 だから、あんな理不尽な言葉を受けたとでも言うのか。
 だから、あんなに悲しんでいても、怒りを抱いたジークを止めたとでも言うのか。
 あんな、理不尽な目に遭ったのに。

 たった、それだけのことで。

「……そんなの、あんまりだ」

「…………」

 頭を抱えて声を絞り出したジークに、ぎこちない微笑を無理矢理に浮かべて、目元を赤く腫らしながらもスィーラが頷いた。
 そのまま右手に持った石を上げ、続けて文字を刻み込んでいく。ジークもまた、その文字を充血した目で追った。


『W──ジークがおこってくれたのは とってもうれしかったよ──W』


『W──でも だめだよ ぜったいしんでほしくないし じーくにひとをころしてほしくない──W』


『W──だって ひとのこともすきだけど じーくのこともだいすきだから──W』


『W──じーくがわるいことをしちゃったら わたしもかなしいよ──W』


「…………っ」

 胸が痛い。とめどなく涙が溢れる。罪悪感が溢れ、堪えきれず嗚咽が漏れた。
 あんまりだ。そんなこと、残酷過ぎる。

 なら、この胸に未だ残る悪意はどうすればいい。この胸に眠る殺意はどうすればいい。この手に宿る悲しみはどうすればいい。
 スィーラの優しさが、イバラのように心を締め付けていく。突き刺さる棘が傷を抉り、堪えようのない声となって漏れ出した。

 そんな優しい彼女に、人間(おれたち)は何をした。

 その優しさを踏み躙り、否定し、拒絶し、罵声を浴びせ、あまつさせ石を投げた。
 なんだ、俺達(おまえたち)は。なんなんだ、お前達(おれたち)は。
 何様のつもりなんだよ、人間(おまえ)は。

 スッと、布が擦れるような音が聞こえた。
 気が付けば、スィーラが自信の体よりも一回り大きなジークの体を抱き締め、ぎゅっとその額を押し込んだ。自然とそのか細い体を抱き締め、背をさする。
 彼女もまた、堪えていたモノが決壊したようにボロボロと涙をこぼした。喉が潰れているせいか、嗚咽にすらならない声が腕の中から聞こえる。その声を聞くたびにたまらなく悲しくなって、ただ温もりを求めてその小さな肩を必死に抱き込んだ。


「……ぁ、ぁ"あ……っ!──ぁ……、ぁぁぁ──ーーッ!」


 しわがれた声が、土砂降りの雨に遮られて消えていく。水に濡れて冷た
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