暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十一話 元帥杖授与
[4/4]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
勢死ぬに違いない。

ヴァレンシュタインが玉座の前に立った。そして片膝をつく。
「ヴァレンシュタイン、このたびの武勲、まことに見事であった」
「恐れ入ります、臣一人の功ではありません。帝国の総力を挙げた結果にございます」

「そうじゃの、予もいささか手伝ったの」
「はっ」
陛下は上機嫌だ。陛下にとってヴァレンシュタインは戦友なのかもしれない。共に反乱軍を謀り、フェザーンに通じた裏切り者を倒した……。

「そちを貴族にしてはどうかと言うものが有る」
「……」
「これまで平民が帝国元帥になった前例は無い。貴族に列するべきだとな」

ヴァレンシュタインは顔を伏せたまま答えない。周囲がざわめく。陛下の問いに答えない、本来なら不敬といって良いだろう。答えないことで不快感を表しているのか……。陛下も怒ることなく話し続ける。

「どうじゃな、ヴァレンシュタイン」
「その儀は御無用に願います」
「ほう、いらぬか」

「臣は平民として最初の元帥かもしれません。しかし最後の元帥ではありません。御無用に願います」
周囲がまたざわめいた。最後の元帥ではない。その言葉の意味する所は貴族の否定……。

「良かろう、好きにするが良い」
陛下は上機嫌で笑うと、式部官から渡された辞令書を読み始めた。

「シャンタウ星域における反乱軍討伐の功績により、汝、エーリッヒ・ヴァレンシュタインを帝国元帥に任ず。帝国暦四百八十七年九月二十一日、銀河帝国皇帝フリードリヒ四世」

ヴァレンシュタインは立ち上がって階を上り、最敬礼とともに辞令書を受け取った。ついで元帥杖を受け取るとそのままの姿勢で、後ろ向きに階を降り陛下に最敬礼をする。

数歩後ずさるとヴァレンシュタインは華奢な体を翻した。身に纏うマントが微かにはためき、濃紺のサッシュが現れる。そのまま、ほんの数秒の間、ヴァレンシュタインは黒真珠の間を見渡した。

皇帝フリードリヒ四世を背後に黒真珠の間の廷臣を見渡す。音楽が流れ始めた。勲功ある武官を讃える歌、ワルキューレは汝の勇気を愛せり。その音楽とともにヴァレンシュタインは歩み始めた……。



[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ