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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十一話 元帥杖授与
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将、ラムスドルフ上級大将、ローエングラム伯。

ブラウンシュバイク公は名目だけとは言え元帥位を得ている事から武官の側に並んでいる。そして今日、新しい帝国元帥が誕生する。エーリッヒ・ヴァレンシュタイン、二十二歳の若者だ。

帝国元帥は上級大将より一階級高いというだけではない。年額二百五十万帝国マルクにのぼる終身年金、大逆罪以外の犯罪については刑法を以って処罰される事は無く元帥府を開設して自由に幕僚を任免する事が出来る特権を持つ。

二十二歳の元帥……。帝国史上最も若い元帥だ。しかも初めて平民から誕生した元帥……。本来なら平民の元帥などありえない。しかし、帝国では彼が元帥になる事に異議を唱える人間はいない。

彼が元帥になったのが早いのか遅いのか私には分らない。早い時期から軍では、いや宮中でもエーリッヒ・ヴァレンシュタインの名前は聞こえていた。いずれ帝国の実力者になると……。

古風なラッパの音が黒真珠の間に響く。その音とともに参列者は皆姿勢を正した。

「全人類の支配者にして全宇宙の統治者、天界を統べる秩序と法則の保護
者、神聖にして不可侵なる銀河帝国フリードリヒ四世陛下の御入来」
式部官の声と帝国国歌の荘重な音楽が耳朶を打つ。そして参列者は頭を深々と下げる。

ゆっくりと頭を上げると皇帝フリードリヒ四世が豪奢な椅子に座っていた。血色も良く生気に溢れている。半年前からは想像もつかないほど陛下は変わった。そして誰もが皆知っている。陛下を変えたのはヴァレンシュタインだと。

「宇宙艦隊司令長官、エーリッヒ・ヴァレンシュタイン殿」
式部官の朗々たる声がヴァレンシュタインの名を呼んだ。その声とともに絨毯を踏んで一人の青年が陛下に近づいてくる。

黒の軍服に身を包み、元帥に昇進することから肩章、マント、サッシュを身に纏っている。マントの色は表も裏も黒だ。そして濃紺のサッシュと金の肩章。

まるで目立つ事を嫌うかのような装いだ。そして何よりも軍服がこれほど似合わない青年も居ないだろう。黒髪、黒目、優しげな表情。華奢で小柄な体を包む黒い軍服と黒いマント。

大勢の貴族が敵意の視線を向ける中、まるでマントで身を守るかのようにして歩いてくる。知らない人間が見れば笑い出すか、馬鹿にするだろう。帝国も落ちたものだと。だが、この場にはそのような愚か者は居ない。この若者の恐ろしさは外見では無く内面に有るのだ。

彼を軽んじた人間、敵対した人間がどうなったか、皆知っている。オッペンハイマー、フレーゲル、カストロプ、ブルクハウゼン……。彼の持つ果断さ、苛烈さの前に皆、死ぬか、没落した。

彼が黒を選ぶのも或いは死者を弔うための喪服なのかもしれない。そして内乱が起きれば彼が弔うべき死者は更に増えるだろう。この式典に参加している人間も大
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