第36話 serment
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そう言って大地は自分の頭を指さしたあと、胸に移動する。
恐らく大地は、曖昧で、自分自身すら確証を持つことができない『何か』に誇りを持っている。信念があるからこそ、μ‘sに愛情を持っているからこそ、大地は後悔しない。もしも、過去の自分に会えるとしたら、彼は間違いなく『ありがとう』を笑顔で言うことができる。
大地は絶対にそう信じてる。
「結局、何も変わんねぇんだよ。もしも俺の記憶が失われなかったとしたって、俺のやるべきことは同じなんだ。君たちのサポート役でもあり、μ‘sの十人目のメンバーでもある笹倉大地っていう人間は、記憶の有無で行動理由が揺らぐような甘い人間じゃねぇんだよ」
花陽は言葉を失ってしまった。
笹倉大地という男の子は...彼女たちを支える男子高校生は、強い人間だった。
花陽が知っていた彼よりもずっと、ずっと...
────お節介だった
自分のやったことが彼の地雷を掘り返しただけだけたったことに今更気が付いた。
おそらく、彼の言ったことに嘘偽りは無い。彼はただ、自分の本心を明かし、それでも自分にはやりたいことがあるからやろうと決意している。
理屈で言えば、これ以上は深みにハマってはいけない。
見守るべきだ。
でも、彼女にはどうしてもできない。納得できない。
今日、この日、この時、この瞬間。
小泉花陽は知る。
自分の内側には、こんなにも軽々と体裁を打ち破るほどの、莫大な感情が眠っていることを。
「でも花陽には、言わなきゃならないことがあるんだ」
「え?それは?」
大地は花陽に近づいて肩をそっと抱き寄せる。
自分が今、意中の男の子に何されたのか理解すると、途端に顔を真っ赤にさせてもがこうとする。
「ふぇ!?だ、大地くんなにを────」
「ありがとう」
笹倉大地はそう言った。
花陽のやったことは確かにお節介ではあった。にも拘わらずに少年は、大地は『ありがとう』と感謝の気持ちを伝えた。
「本当は誰にも俺の”秘密”を知って欲しくなかったんだ。知ったことできっとその子が迷惑がかかると思ったから、知ったことで花陽みたいに悲しむと思ったから。ずっと”秘密”を隠し通してやっていくつもりだった。でも無理...だったな。今こうして花陽に知られてお説教くらってるもんよ
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