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μ's+αの叶える物語〜どんなときもずっと〜
第36話 serment
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「俺の”秘密”を知った上に...そんなに俺の事を心配してくれてたんだな」




何かを悟ったように、大地の腕に力が妙に籠る。

その姿があまりにも不憫で、可哀想で。思わず花陽はその力の入った手をギュッと握る。




「...ありがとうな花陽。でも、さ。違うんだよ」




何か言おうとした花陽を遮るように、大地は言った。



















「俺は小学生の時の大半の記憶が無いから詳しいことは全然わかんねぇんだけどさ」







なにか...大切なことを言いそうな気がする。花陽はそう感じながら彼の言葉に耳を傾ける。




「以前の俺のことなんて思い出せないけど、どんな気持ちで最期(さいご)を迎えたのか、全く想像できないけどさ。でも、心がボロボロになるまでとか、記憶を失うまで過酷な日々を送っていたとか、自分一人が傷つき続ける理由はどこにもないとかさ」










 記憶喪失であることが彼の言葉によって露見にされた。それ自体が彼にとってとてつもなく大きな出来事なずだ。だが、大地が抱えている”芯”はそこではない。




























「多分さ、俺はそういうことを言うために、記憶が無くなるまで地獄の日々を送ったとか、体を張ったんじゃあないんだと思うんだよ」
















 花陽の表情が止まった。今話したこと事が、笹倉大地の”芯”であり、根っこの部分。

だからこそ、彼は記憶を失ってしまった事実を隠す。誰かのせいだと、動かなければこんな結末を迎えることは無かったと、くだらないセリフを口に出してその誰かを傷付けなさせいために。

 それはもう、決して思い出すことができない、笹倉大地を形成する、一つの過去。







だけど、それでも大地は何かを成すために傷つく覚悟を決めて、実際にそれを一つの結果として成し遂げた。

 美化された自殺願望でもなく、やるべき行動の先にある”結末”という終わりが待ち構えていて、それでも揺らぐことなく前へ進んだ、という一つの結果を。










「もうあの時の事は...思い出せるかわかんねえけど。でも、仮に思い出せなくても、その失った”カタチ”のおかげで”今”の俺がここにいる。俺が生きている。いなくなった頃の俺が、”今”の俺の原動力になって、動かしている。残っているんだよ花陽...”(ココ)”じゃなくて”(ココ)”に」














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