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ソードアートオンライン アスカとキリカの物語
アインクラッド編
旅立ちの決意
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どこをどう歩いて、宿に泊まって、寝床に入ったのか覚えていない。
気がついたら、アスカは布団にくるまっていた。
緩慢な思考回路でまとまりもしない考えが頭の中をぐるぐると渦巻いていた。


茅場昭彦が消えたあと、多くのプレイヤーが喚き、叫んでいた。

「嘘だろ・・・・なんなんだよこれ、嘘だろ!!」
「ふざけるな! 出せ! ここから出せよ!!」
「こんなの困る! この後約束があるのよ!」
「嫌ああ! 帰して! 帰してよおおおお!」

悲鳴。 怒号。 絶叫。 罵声。 懇願。 咆吼。

それらの音は互いに反響し合い、仮想の空気を振るわせた。

その騒動もさすがに五時間近く経過した今は落ち着いているが、大半のプレイヤーは未だに茅場の台詞を信じることができないでいた。
アスカもその1人である。
しばらくしたら外部の手で助かるかもしれない。そう思っている。
初期状態のお金でも武器を1つ買って、宿に数日泊まるぐらいの金額は用意されている。
先ほどまでの狩りで手に入れた大量のアイテムを全て売り払えば、さらに数日分の宿代は手に入る。
その期間、死の危険を避けるためにフィールドに出ず、安全な宿の中で過ごしていれば、外部からの救助が来るかもしれない。

しかし、
助けがこなかったら?
何日にも渡ってこの世界に閉じこめられることになったら?
本当に百層クリアするまでログアウト不能のままなら?
そう考えると、背中がうすら寒くなる。
コルを全て使い果たしてしまったら、何らかの手段でコルを入手する必要がある。
宿屋にはコルが無ければ入れないし、食料も手に入らない。
最悪、モンスターの出てこない安全な圏内で野宿することで、宿屋に入ることは諦めるとしても、食糧問題はどうすることも出来ない。
水はビンさえ持っていたら、わき水を無料で補給できるが、食料はコルを払って入手するしかない。
もしかしたら〈始まりの街〉の数カ所に生えている木のたわわと実っている果実が落ちてくることもあるかもしれないが、あくまで可能性であり、確実性に乏しい。
そんなものを当てにして生きていくわけにはいかない。
仮想の空腹なのだから無視したらいいとも思う。しかし、こんな絶望的な状況でさえお腹は減っている。さきほどから何かを食べたいという欲求がこみ上げている。
リアルでは何も食べたいと感じないであろう、このような極限状態においてもシステムによって空腹は感じている。
落ち着いて生活をし始めてから、この空腹を無視し続けていくことは不可能だ。

ウインドウを開き、手持ちのコルを確認すると、1番安い宿屋に泊まり、1日3食全て1つ1コルのパンを購入したとしても、1ヶ月も持たない。
それ以上長い期間、ここに閉じこめられる状況が続けば、コルを貯める必要が出てくる。
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