第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
六十一話 百鬼夜荒 肆
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唸りを上げ打ち込まれる拳打――――
断刀の様に振り抜かれる脚?――――
一撃一撃に死を連想させる程の脅威が胎み、その猛撃に曝される者にとってはまるで厄災が怒濤の様に迫って来る事と遜色無いであろう。
次々と自身へと放たれる脅威に、虚空は反撃もままならず防戦一方であった。
勇義が繰り出す攻撃は只の拳打だ。
なんの着色も無い、単純で純粋なモノ。
だが――――放たれるソレはどんな強力な武器や能力などよりも獰猛的であり、兇威的なのだ。
大振りで大雑把な攻撃である為、寸前で躱し反撃に移る――――そういう行動が出来る様にも感じるが事はそう単純ではなかった。
仮に“技”の達人が居たとしよう。
卓越した技量を持って、あらゆる打撃や武器を捌きいなし、数多くの技を持つ者。
“技”とは“力”が及ばない相手に対抗する為に生み出されるものである。
つまりは足りないものを補う事を目的としている。
技巧を駆使し“力”を凌駕する事が理想であり、現にそれを体現している者は居るであろう。
一定の水準の力関係の話なら――――
どれ程、技を極めようと、技法を身に付けようと――――災害は捌けない。
剣や槍を捌けたとしても、川の濁流を防げる筈がないのと同義である。
常軌を逸する程の“力”の前では、どの様な“技”も小手先の児戯と化す。
結局の所、この世界は“力”がものを言う真理の元に成り立っているのだ。
勇義の“力”は正に災害と言っていい。
彼女の前では“技”など介在する余地無く、そういうモノは塵芥と成り果てる。
それを証明するかの様に、嵐の如く荒れ狂う拳打は振り抜かれる度に有り余った暴威の余波を大地や空間に駆け巡らせ破壊を刻んでゆく。
虚空は迫る攻撃全てを大袈裟な程に距離を取り直撃を避けている――――直撃すれば只では済まないのは言うまでも無いからだ。
疾風の如き速度で虚空との距離を縮め、目前へと迫った勇義が右拳を放つ。
最早何回目かも分からない必滅の拳?を――――
大きく振りかぶられ正面へと打ち出された拳を――――
虚空は足を止め、迎え撃つかの様に構えたのだ。
まるで天から落ちる流星とも幻視出来る程の脅威を纏った一撃を、である。
正面から受ければどうなるかなど火を見るより明らかであり、正に愚の骨頂だ。
破壊の拳が虚空へと迫り――――
勇義が必殺を確信した――――
次の瞬間――――
その拳は――――否、勇義自身が何かの圧力に曝され弾き返された。
「なッ!クッ!!」
勇義は、何が起こったのか?と思考するよりも早く体勢を直そう
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