第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
六十一話 百鬼夜荒 肆
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踏み締め立っていた。
虚空の一撃が打ち込まれた首筋を押さえており、当てている手の隙間から流れる血が首、肩と伝い着物を赤く染めているが致命傷と感じる事はない。
『鎧鋼』は硬度を上げる単純な技法である――――が、ある特徴を持つ。
それは『得られる硬度は完全に個体差であり、霊力・妖力等の力の大きさに比例しない』と言う事。
例えれば、ルーミアと幽香を比べると幽香の方が硬度は高いが、それはルーミアの妖力が幽香に劣っているからではない。
神奈子と諏訪子も神奈子の方が防御力を持つが、諏訪子が神奈子より劣っている訳ではない。
逆に彼女達より数段劣る様な者が最硬度の鎧鋼を纏う事もある。
そして稀に高い力を持ち尚且つ最硬度の鎧鋼を纏う、と言う者も稀に居る。
そんな稀な存在が今虚空の目の前に居る。
虚空も勿論鎧鋼を使っている――――その状態で首に完全に入った一撃が必殺にならなかった事実に彼は心底うんざりしているのだ。
本来ならそんな輩とは真面に相対などせず逃げる所なのだが事情と状況がそれを許さない。
勇儀の硬度も虚空の誤算ではあるのだが、それ以上に――――
「……やってくれるじゃないかい……侮ってたつもりはなかったんだけどね、正直肝が冷えたよ。
でもお陰で血の気も良い感じで下がったんでね……二度目は無いよ?」
勇儀が纏う烈氣や覇氣に揺らぎや衰え等の変化はないが、その瞳には理性の色が強くなっている。
先程まで繰り出していた攻撃は勿論本気であっただろう――――しかし焦りや苛立ちがその鋭さを鈍らせていた事もまた事実。
冷静さを取り戻した?彼女《勇儀》は更に驚異的な存在となる事は想像に容易く、虚空もそれを理解しておりこれから起こるであろう先の暴威を超える災厄に備える。
「アンタが何なのかは理解できないけど――――本気だっていう事は解ったよ。
だから……もう一切の油断もしない、確実に殺す」
激しい言葉を冷たく吐く勇儀に対し、
「アハハ……それは困ったな〜死ぬのは勘弁だよ」
相変わらずの気の抜けた様な顔でそう返答していた。
そんな虚空の態度を前にして勇儀は先程までの様な憤りは見せず、それと相反するかの様に気勢が嵐の如く吹き荒び周囲に放たれた。
そして勇儀は放たれた矢の如き鋭さで空を切り虚空へと翔け――――滅殺の威力を持った拳が打ち込まれる。
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