第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
六十一話 百鬼夜荒 肆
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空の笑い声と嫉妬の砕け散る音が混ざり合う中、勇義の表情には疑念の色が広がっていた。
目の前の相手の氣質は何一つ変化してはいない。
だが…先程までの放たれて来た攻撃全て、間違い無く此方の命を絶ちに来ていたからだ。
面白い話で妖怪や神・邪神等の超常の存在は姿形をとっている生物と同じ所を弱点としている。
人型なら正中線に代表される人中や水月等だ。
基本的な強度は生物より上であるが、弱点には変わりがない。
そして生物と同じ、と言う事は“首を落とされれば死ぬ”。
如何に生命力が高い者であったとしても絶命は免れない。
殺す気でかかる以上、首を狙うのは特に有効である。
虚空の攻撃は全て首狙いであった。
それは彼の言葉に偽りが無い何よりの証拠だ。
だが殺氣も他の発氣も出さず、まるで息をする様な自然さで相手を殺しにかかる虚空に勇義は薄気味悪さすら感じていた。
「……アンタ……本当に何々だよ」
苛立ちと虚空への不気味さが混在した勇義の言葉に、
「何って?……僕は僕だよ、それ以上には成れないしそれ以下に為るつもりもない」
虚空は裏表を感じさせない笑顔を浮かべ、刀を持つ右手を脱力したかの様に垂れ半身に構える。
それを見て勇義も腰を落とし構えをとるが――――
「ッガァ!?」
その瞬間、喉へと虚空の左の手刀が突き込まれた。
この状況に勇義は驚愕していた。
十分な距離があったにも関わらず攻撃受けたから――――では無く。
虚空の動きがはっきりと見えていたのに、全く反応が出来なかった事に――――である。
八坂 神奈子曰く――――
『虚空が正面から相対する事そのものが罠だと思え』
事此処に至までに勇義には複数の糸が闕けられていた。
一つは攻撃に対する認識――――虚空の攻撃は全て“首”を目標にしていた。
だが相手の攻撃目標が明確だと言う事は、逆を言えば防御し易いと言う事でもある。
しかしそれは半分は間違いだ。
狙いに対して対処する、それは相手からすれば防御が限定する、と言う事実。
狙いを明確にし対応を限定させれば、余分な事に力を削く必要も減り戦略を尖鋭化しやすいのだ。
勇義は無意識の内に、虚空の行動の都合が良い様に対応を刷り込まれていた。
一つは虚空の気配の小ささ、である。
虚空の氣質は変化しない――――そしてその氣の大きさは一般の人間と殆ど遜色が無い。
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