第七章
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「様々なことをした。そしてだ」
「ドイツを。ヒトラーを裏切ったというのですか」
「連合軍との講和の交渉をはじめたのだ」
「そうされたのですか」
「そしてだ」
そのうえでだというのだ。
「ドイツを救おうとしたのだがな」
「だからこそ貴方は」
「ああした。総統閣下の下に留まることはできた」
それもできたというのだ。
「あのいけ好かないゲッペルスと共にだ」
「そして自害されることも」
「できたのだがな。名誉を守りだ」
「しかし貴方は反逆者となった」
「ならそれでいい。後悔はしていない」
本当にだ。ゲーリングは何も悪びれてはいなかった。胸を張ってさえいる。
「何一つとしてだ」
「では」
「私はこのまま裁判を受ける」
それが即ち何を意味しているのかも理解したうえでだというのだ。
「もっとも意地は見せるつもりだがな」
「意地とは?」
「それは今は言わない」
不敵な笑みでだ。ゲーリングは弁護士に答えた。
「だがこのことは言っていく」
「左様ですか」
「さて、それにしてもゲッペルスは流石は宣伝相だ」
ゲーリングは話題を変えてきた。彼の政敵についての話題に。
「多くの俳優を使ってきただけはある」
「だからだというのですか」
「そうだ。上手く演じきった」
シニカルな笑みを浮かべてだ。ゲーリングは弁護士に話していく。鉄格子の向こうにいる彼に対して。
「忠臣をな。だがそれは演技以上にだ」
「それ以上に」
「あの男の地だったのだろう。私も地を出してだ」
「ゲッペルスもですか」
「地を出した。そういうことだな」
自分でだ。こう言ったのである。
「それぞれな。そしてだ」
「そして?」
「総統閣下は後継者にあの男を任命されたそうだな」
「デーニッツ海軍元帥ですか」
「そうだ、あの男だ」
ドイツ海軍の潜水艦艦隊の指揮官でありドイツ海軍の最高司令官だった彼をだというのだ。
「あの男を任じられたな」
「その通りです」
「そうだな。私は総統にならずにな」
そのデーニッツが総統、ナチス=ドイツの最後のそれになったことについてだ。ゲーリングはシニカルな、しかし達観したものも含んだ笑みを浮かべてだ。こう言ったのである。
「彼が総統になった。そしてゲッペルスは最後まで信任を受けた」
「そのことについては」
「総統閣下の目は確かだ。最後の最後までそうだった」
「そうですか」
「そうだ。そして私はだ」
ゲーリング自身はどうかというのだ。
「最後の最後まで私でいるとしよう」
こう言ってだ。そのうえでだ。ゲーリングはこの裁判を最後まで自分として受けようと誓うのだった。そし
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