巻ノ四十九 立花宗茂その五
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その食しているものは稗飯に汁をかけたものだ、宗茂はその汁かけ飯を見て言った。
「兵達が陣中で食していました」
「この汁かけ飯を」
「最初それが食いものとは思いませんでした」
宗茂にしてみればというのだ。
「恥ずかしながら家が豊かで」
「それは恥ずかしがることではありますまい」
「いえ、兵が口にしているものを知らぬのは」
即ち兵を知らぬことはというのだ。
「不覚でありました」
「兵のことも全て知りですな」
「そして満足に戦が出来ます」
「それ故に」
「このことはそれがしの不覚でした」
こう幸村に言うのだった。
「まことに、しかし真田殿は」
「はい、よくです」
「そうしたものをですか」
「口にしています」
「それが美味しいのですな」
「実に、よく家臣達と共に食っています」
この汁かけの稗飯をというのだ。
「無論白米の飯の時もありますが」
「しかしですな」
「確かにこうしたものもよく口にします」
「家臣の方々と共に」
「ご存知と思いますが」
「十勇士ですな」
「それがしには過ぎた忠勇を兼ね備えた豪傑が十人おります」
幸村は微笑み宗茂に話した。
「まことに有り難いことに」
「そうなのですか」
「それがしは果報者です、宝を持ち過ぎております」
「そちらは贅沢だと」
「それに過ぎまする」
こう微笑んだまま宗茂に話した。
「全く以て」
「ですか、ではこの度も」
「あの者達とは今は行動は別にしております」
言うのはここまでだった、宗茂が真田家の者ではないので信じていない訳ではないが用心の為に手の内を見せなかったのだ。
「そうしています」
「左様ですか、そして」
「あの者達と合流し」
「そのうえで」
「島津家に入ります」
「島津家は四兄弟が率いております」
宗茂は幸村がこれから調べ彼の敵であるこの家のことをここで話した。
「そしてその四兄弟がです」
「それぞれですな」
「傑物揃いで」
「長子であり主の義久殿を軸として」
「次子の義弘殿、三子の歳久殿、末子の家久殿とです」
「どの方も傑物」
「その方々が一致団結しております」
それが島津家だというのだ。
「兵達も強者揃いです」
「それ故の強さなのですな」
「そうです」
まさにというのだ。
「傑物揃いのうえ内はまとまり兵は強い」
「だからこそ強い」
「しかも鉄砲も多く持っています」
武器も備えているというのだ。
「種子島から鉄砲は伝わりましたな」
「あの島に南蛮人が来て、でしたな」
「そこから伝わりましたが」
「その種子島は」
「島津家の領地です」
島を治める種子島氏は島津家の家臣だ、まさにそうした縁でというのだ。
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