第一章
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反逆者
ヘルマン=ゲーリング、この男の名前を知らない者はドイツ、ひいては欧州には一人もいなかった。それは何故かというと。
今飛ぶ鳥を落とす勢いのナチス=ドイツのナンバーツーだからだ。ナチス政権の航空相としてその力量を思う存分見せていた。それに加えてだ。
ヒトラーはだ。常にこう言っていた。
「私の後継者だ」
こう言っていたのだ。その言葉を聞いてだ。
誰もがだ。こう言うのだった。
「次のナチスの総統か」
「ドイツの国家元首になるんだな」
「じゃあ次はあの人だな」
「あの人につけばいいな」
「そうすればいいんだ」
「ゲーリングに従えばいいんだ」
中には露骨な媚を言い出す者までいた。
「彼の主張に従おう」
「そしてドイツにつけばいいんだ」
「よし、じゃあゲーリングのところに行こう」
「彼にものを贈ろう」
自然とだ。媚は行動にもなった。そしてだ。
彼の下には次々とだ。贈りものが届けられた。それで彼の屋敷はうず高く積まれる程だった。
その贈りものの山を見てだ。ゲーリングはその太った、かつては引き締まり端整だったその顔と身体を大きく揺らしてそのうえでだ。こう妻に言うのだった。
「いいことだ」
「非常にですね」
「そうだ。誰もがわかっているのだ」
何をわかっているのかもだ。言うゲーリングだった。
「次は誰なのか」
「あなたですね」
「私だ。私がドイツの総統になりだ」
そしてだというのだ。
「欧州を治める。そのことがな」
「贈りものが嬉しいのではないのですね」
「贈りものは確かに嬉しい」
ゲーリングもこのことは否定しなかった。
「だがそれ以上にだ」
「誰もがあなたを次の総統だと認めていることが」
「何よりも嬉しい。私が総統になればだ」
ゲーリングは有頂天になり彼よりは随分と痩せている妻に対して告げた。
「これ以上のものが得られるのだ」
「贈りものだけでなく」
「そうだ。賛美が得られるのだ」
それがだというのだ。
「そしてその日は必ず来る」
「このままドイツは勝ちそうして」
「欧州の支配者となるのだからな」
ヒトラーの政策をそのまま述べて確信しての言葉だった。
「その時を楽しみにしていよう」
「そうですか。ところで」
「ところでとは?」
「あなたに一人。淑女が御会いしたいと言ってきていますが」
「帰ってもらえ」
女のことについてはだ。ゲーリングは妻に素っ気無く返した。
「興味がない」
「左様ですか」
「そのご婦人が何故私のところに来たいと言っているのかはわかるな」
「はい」
妻
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