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Bitter Chocolate Time
5.開店
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「おおきに、マーユ」ケネスはにっこりと笑って、一つのチョコレートをつまんでマユミに手渡した。
「それはリッチでクリーミーなミルクチョコレートや。マーユのイメージにぴったりやと思うで」
「いただきまーす」マユミは手渡されたそのチョコレートを口に入れた。「んー!」マユミは目をぎゅっとつぶって両手を頬に当てた。「最高ーっ!」
「お気に召しましたか? マユミお嬢さま」ケネスが言って笑った。
「どれどれ、俺も」ケンジが箱に手を伸ばした。「これ、いただこうかな」

 彼がつまんだのは四角い形のダークブラウンのチョコレートだった。

「それはうちで一番カカオ成分が多くて香りがリッチなビターチョコや」
「へえ」ケンジはそれを口に入れた。「おお! なるほどっ!」
「おいしい? ケン兄」
「確かに苦い。でもただ苦いだけじゃなくて、本当に香りがすごい。カカオってこんなに強烈に香るんだ」ケンジは感動したように言った。「でもやっぱり苦い……」ケンジは渋い顔をした。
「苦い思いをした後は、これやで」ケネスは箱からベージュがかったブラウンのチョコレートを手に取り、ケンジに与えた。ケンジはそれを口に入れた。
「どや? かえって普通のんより甘く感じるやろ? ケンジ」
「うん。甘い。やっぱり俺、チョコレートはこれぐらい甘甘の方がいいな」

 今度はケネスがウィンクをした。「苦い経験の後のマーユとの時間は、格別やったやろ?」
「そうだな」ケンジは少し照れたように笑ってうつむいた後、すぐに顔を上げてマユミを見た。マユミもケンジを見つめ返していつもの愛らしい笑顔を作った。
「ケン兄に抱かれて、甘く溶けちゃう。あたしもチョコレートと同じだね」
 ケネスは仰け反った。「ええなー、わいも女のコにこんな風に言われてみたいもんや」
「マユ、恥ずかしいこと人前で言わないでくれよ」ケンジは赤くなってマユミの額を小突いた。
「ま、キホンチョコレートは甘い方がええな。やっぱり」ケネスは笑ってカップを持ち上げた。

――the End

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