4.改心
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持ち歩いてんだよ、お前」
「語学の練習用やんか。日本語うまくなりたいよってにな」
「練習する必要あんのかよ」
「わい、日本語ようしゃべらへんねん。大阪弁やったら達者やねんけどな」
「あほか」
マユミが笑いながら訊いた「で、そのボイスレコーダーのデータって?」
「わいがアヤカに犯されてる時のアヤカの声が録音されてるんやで」
「犯されてる?」マユミは赤くなった。
「あれはエッチとは言われへん。わいはアヤカのおもちゃやった」
「おもちゃねえ……」ケンジがコーヒーをすすりながら言った。
「聞いてみるか? 二人とも。臨場感たっぷりやで」
「え、遠慮する」マユミが言った。「俺も」ケンジも即答した。
「そうか、そら残念や」
「何が残念なんだか……」
「このデータ、アヤカが知らばっくれた時の切り札やったんやけど……。おお、そうやった。忘れとった」ケネスはバッグからアソート・チョコレートの箱を取り出した。「親父の特製アソートや」
「ケニーのパパがショコラティエだったなんて、すごいよ」
「普通のチョコなんだろうな? これ」ケンジがいぶかしげに訊ねた。
「催眠剤入りや。マーユを眠らせて、ふっふっふ……」
「じゃあお前が先に食え。ほら、口開けろよ」ケンジはケネスに掴みかかった
ケネスは笑いながら抵抗した。「そうやってわいを眠らせて、どないする気ぃや? ケン兄のエッチ」
「あほっ! いいかげんにせえ!」
「ケン兄も大阪弁になってきてるよ」マユミがおかしそうに言った。
「ツッコミ、なかなかええタイミングやで、ケンジ」
「もういいよ。で、店はいつオープンなんだ? ケニー」
「四月に入ったらすぐや。三丁目のど真ん中やで」
「へえ! じゃあここから近いな」
「そやな。オープンの日、遊びに来たって。待っとるさかい」
「行く行く!」マユミが叫んだ。「楽しみだね、ケン兄」
「そうだな」
マユミがデキャンタからコーヒーをケネスのカップにつぎ足した。「おおきに」ケネスはそのカップを手にとって言った。「しかし、アヤカが泣き出して、ケンジがヤツの肩に手置いた時には、やばっ! て思ったで」
「どうして?」ケンジがチョコを口に運びながら聞いた。
「そのままキスでもすんのか、思たやんか」
「しなかったんだ」マユミが言った。
「しないよ」
「しなかったんやな、これが。ほんま、ケンジは紳士やと思うたわ。さすがやな」
「同情が人のためになったためしがあるか? 俺のためにもならないしな」
「そらそうやわな。へたするとアヤカの病気が再燃するかも知れへんからな」
「でもさ、」マユミだった。「ケン兄のついた苦し紛れの作り話が、結果的にアヤカを改心させたわけでしょ? それってすごくない?」
「そうなんや。しかしまたとんでもない作り
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