1.故障
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りスピードがアップしていることを実感した。
昨夜のマユミのマッサージのお陰かも、と思った時、左の二の腕に妙な違和感を感じた。しかし、どうしても新しいフォームを体得したくて、ケンジはさらに大きくリカバリーをした。
しかし、次の瞬間、左腕全体に激痛が走った。
「うっ!」あまりの痛みに、ケンジはその場に立ちすくみ、水の中に身を屈めて、左腕を押さえた。
「おい! ケンジの様子がおかしいぞ!」誰かが叫んだ。
「引き上げろ!」コーチも叫ぶ。「海棠くん!」アヤカの声も聞こえた。
プールに併設されたジムのレザー張りベッドに横になったケンジは、悔しさと腕の痛みに歯を食いしばっていた。額に大量の脂汗をかいている。
「大丈夫か、海棠」コーチがベッドの横に立って言った。
「す、すいません、コーチ……ううっ!」また腕に激痛が走った。
「無理するなって、言っただろ」
「…………」
「しばらく休んでろ。すぐに医務の先生が来るから」
「あ、ありがとうございます……」
「家庭に連絡してやる。今、家には誰かいるか?」
「い、いえ、俺、自分で連絡します。だ、大丈夫です。足と右手は普通なんで」ケンジはあわててそう言った。
コーチは肩をすくめた。
「そうか、じゃあお前が連絡しろ。早めにな」
「はい」
簡単な診察が済んで、ケンジの左腕にシップ薬を貼り付けながら医務担当の女性職員は言った。「それほどひどい怪我じゃないけど、痛みはしばらく残るかもね」
「あ、あの、大会は……」
「明日なんでしょ? その状態で出場する気?」
「無理……ですよね……」
「痛みだけじゃ済まなくなるわよ」
ケンジはうつむいてため息をついた。
「しばらくは、あまり動かさないようにするのよ」
「わかりました」
「痛みが引くまで少し横になってなさい。痛みが引かないようなら、一度病院で看てもらった方がいいかも。じゃあお大事に」
医務員はそこを出ていった。
一人、ベッドに残ったケンジは、マユミを想った。自分がフォームを変えてまで記録にこだわったのは、一つはマユミに自分の成長を見てもらいたかったからだ。それを思うと自分が情けなくて、自然と涙が溢れてきた。
その時、ジムのドアが開き、誰かが入ってきた。
「海棠くん、大丈夫?」アヤカだった。
「え? ああ」ケンジはあわてて涙を右手で拭った。
「気を落とさないで。みんながあなたの分までがんばってくれるよ」
「すまない、俺のわがままのせいで、大会に傷をつくっちゃって……」
「今はゆっくり怪我を治すことだけ考えて」
アヤカは毛布越しにケンジの胸にそっと手を置いた。
「そうそう、これ、栄養ドリンク。飲んで」
「え?」
「体力、落とさないようにしないといけな
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