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SAO−銀ノ月−
第百十三話
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。アイドルではなく学者らしい表情になった彼女の顔を、ユウキはクッキーをかじりながら覗き込んだ。

「どうしたの?」

「その……気を悪くしたらごめんなさい。SAOって言えば、わたしたちVR科学者にとっては、禁断かつ聖域みたいなモノだから」

「それは……そうだろうね」

 VRの知識なんてまるでないルクスからしても、セブンの言わんとしていることは何となく分かる。もう一つの現実世界、とまで言われるようになったあの場所は、確かにVR研究者にとっては一種の到達地点なのだろう、と。それとは同時に、決して繰り返してはならないことだということも。

「わたしがこのALOに来たのも、あのゲームの流れを汲んでいるからだし……なんて。友達がSAO生還者だってことは驚いたけど、あんまりする話じゃないわね」

「ボクは違うけどね。……そういえば、セブンはなんでVR研究者になったの?」

 VR研究者の顔からアイドルの笑顔に表情を戻し、セブンはルクスに小さく笑いかけた。そんなルクスはユウキの空のコップに紅茶を注ぎ、ユウキはふと気になったことをセブンに聞いた。

「うーん……」

「あ、言いにくいことだった……?」

「いや、そういう訳じゃないんだけど……わたしがVR研究者になったきっかけは、そのSAOなのよね」

 熱い紅茶を息で冷まそうとしているユウキから来た質問に、セブンは困ったように答えた。SAO生還者であるルクスに気を使っているのか、チラッとそちらを向くと、ルクスは『大丈夫だ』とばかりに頷いてみせる。

「お姉ちゃんがSAOに閉じ込められた、ってお母さんから連絡が……って、ルクスには言ってなかったっけ」

「…………っ」

 ちょっと訳ありのお姉ちゃんがいて――と、セブンがルクスに自身の会ったことのない姉のことを話している最中、ユウキは『彼女』のことが脳裏によぎっていた。レイン――セブンが探している、彼女のすぐ近くにいる実の姉のことを。レインがその姉だと言ってあげたい衝動に駆られながら、ユウキはさらに言葉を続けられた。

「それで、お姉ちゃんを助けるんだーって、VR研究者にね。ま、もちろん成果なんて出る前にクリアされちゃって、お姉ちゃんも生き残ったらしいけど……ユウキ、どうしたの?」

「え、あ……ううん! その、大変なんだなって……」

 それからは連絡も取ってない――と、寂しそうに、嬉しそうにセブンは笑って。その表情を見て、ユウキはあることを思う――セブンは少し、自分に似ているということを。

「お姉ちゃん、か……」

 ユウキが誰にも気づかれない程に小さな声で呟くと同時に、セブンの元にメールが届いたことを示す音声が発せられ、セブンは嫌そうな顔を隠さずにそれを読んでいく。

「どうしたんだい
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