幕間
第五十六話 幕間1
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サラボナの大富豪ルドマンの長女、デボラは退屈を持て余していた。
アベルとビアンカの捜索に尽力するとミレイには言ったものの、実際に捜索するのは父ルドマンの役目であった。しかしこれはデボラが父親任せにしているのではなく、彼女は父親を通じてでしか2人を探索できなかったというだけの話だ。
だが、彼女はそんな現状にどこか歯痒さと苛立ちを感じていた。
友人の為に行動しようと思っているのに、こうして家で結果を待っている自分自身に対して。
「デボラ様、アフタヌーンティーのご用意が出来ました」
メイドの声にハッとし、部屋に入るように告げるとメイドがポットとカップ、そしてスコーンを乗せたワゴンを運んできた。
洗練された手付きでメイドは紅茶をカップに注いで、デボラに差し出した。カップを受け取り、一口紅茶を飲んで息を吐く。
やはり、紅茶はいいものだ。
そう思いデボラがアフタヌーンティーを満喫しようとした時、窓の外から何やら物音がした。
折角のアフタヌーンティーを無粋な物音に邪魔され、不機嫌な表情に成りつつも窓の外を見ると町の噴水の前の広場にたくさんの人だかりが出来ている。
普段だったら別に興味はないが、デボラはせめて自分の至福の時間を邪魔したものの正体を知るべく、そして退屈を晴らす為に屋敷の外へと出て行った。
噴水の前の広場には窓の外から見た時以上に人だかりが増えていた。人混みに苛つきながらも適当に町民をどかしながら、一番前のよく見える場所を陣取る噴水の前を睥睨した。
目の前にいたのは礼服こそ一般の物とは違うが、若い神父だった。彼の周りには幾つかの荷馬車が控えている。
神父とその荷馬車を疑問に思う間も無く、神父が声を張り上げた。
「サラボナに暮らす皆様!今日はこの場にお集まり頂き誠にありがとうございます。私は光の教団のネビラと申します。私がこのサラボナに来たのは皆様にこの世界の危機を伝えるためです!」
ネビラが『世界の危機』という言葉を口に出した瞬間、人混みの中から幾つもの困惑の声が上がった。
それらの声が上がってしばらく間を置いてからネビラは再び演説を始めた。
「今世界は未曾有の危機に瀕しています!私達が信仰する神は私達にある一つの神託を告げました。『この世界は大量の恐ろしい魔物達によって破壊し尽くされ、滅びを迎えるであろう』と」
困惑の声は大きくなり、悲鳴も混ざった。
「しかし、臆する事はないのです!神の神託には続きがあるのです!」
人混みの中の声は消え、広場に沈黙が満ちた。
サラボナ町民のほぼ全ての視線がネビラに注がれる。
「その続きとは『しかし、我を信仰し敬い讃えるのであれば救いは与えられる。その者は我と共に光り輝く世界で末永く幸
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