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或る皇国将校の回想録
第四部五将家の戦争
第六十二話天下の乱れんことを悟らずして
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に堪えない有り様だ、砲兵隊の装備は壊滅状態だ。実際のところ補充を受けないと戦力が保てないのは同じだ。だがその中で相応以上の比重を置いた資源(リソース)がここに割り当てられている、それを念頭においてくれないと困るのよ、我々としては」

「――はい中佐殿」

「宜しい、司令。――この六芒郭に集積される物資はかなりの物だ、敵の方囲に備えるために万全の態勢を整える為にな」

「つまり節約が必要だ。とおっしゃりたいのですか?」
新城が口元を歪めて云った。
 弾薬消費量の増加に未だ軍の対応は追い付いていない。勿論、改善自体はされているのだが、それでも単純な生産量において効果があらわれるにはまだ時間がかかり、前線では未だに厳しい状況だった。

「さてな、それは貴官が判断する事だ、司令」
馬堂中佐は唇を吊り上げて云った。
「だが、これ以上物資を輸送すると防衛線――取り分け皇龍道の防衛に支障をきたす、そう護州軍が強く言っている。悪いがこれ以上のお代わりはなしだ――実際余裕がないからな。
彼らが来てくれただけでも相当の博打なのさ」

 大辺は内心溜息をついた。結論に至るまでの過程を豊守から書状で伝えられた時、豊久の荒れようは相当な物であった。

 ――要塞が陥落しても困る、だが直衛達が脱出しても困る。護州共め!主導権欲しさに皇龍道などに出張るからこうなるのだ。クソッ!誰も彼もが他人の命で博打を張りやがって

――いや、俺も同じ穴の狢か。護州の息がかかった佐脇を抑えるためだけに兵どもに死ねと命じたこの俺も。

 
「――まぁ、いいさ。兎にも角にも持久戦を行えるようにこの要塞を整備する必要がある」
作戦室の窓から角塁を眺める。

 本来なら虎城防衛線各所から引き抜いた工兵達と新城支隊の兵達が未完成の南突角塁を大規模な火力陣地へと改造している。数日前までは単なる丘であったが既に一回り大きなものとなっている。
 新城支隊の兵達だけではなく大規模工事の訓練を受けた工兵大隊が加わり、より能率的に築城作業が行われている。
あれこれと砲の接収と頭数をそろえる事だけはできたが流石に新城直衛が作り上げた大隊であっても要塞の改修と七千を超える敗残兵たちの再戦力化を同時の行うことはできない、そして何より専用の装備、それに技術者が複数いる事はそれだけで応急改修がより素早く進む。


「さてさて、それでは改めて確認させてもらうよ。
貴官ら“新城支隊”は、このままこの六芒郭を根拠地とし、遅滞戦闘を続けてもらう」
閉じた扇で皇都まで通じる皇龍道をなぞる。
「期限は雨期まで、戦略的な目標は虎城防衛線をより強固に構築し、皇都を防衛する事だ。
帝国軍の内、現在動いているのは本領軍の猟兵二個師団を主力とした十万、そして龍口湾で損耗をしたとはいえ東方
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