第一章
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針
病院に急患だった。それはよくあった。
だが今来た患者はだ。誰もが聞いて目を瞠るものだった。
「針!?」
「針が身体の中に!?」
「それも一本や二本じゃなくて」
「何十本もですか」
「そうなんです。大変なんですよ」
救急車で患者を連れて来た看護士もだ。驚きを隠せない顔で話す。
「もうそれで」
「それで患者さんは?」
「大丈夫なんですか?」
「身体に針が何十本もって」
「そうなっていて」
「何とか生きています」
その看護士は患者は大丈夫だと話す。しかしだった。
驚いたままの顔でだ。こう話すのだった。
「ですが。その」
「その?」
「そのって?」
「大変な状況なんですよ」
とにかくだ。言葉に言い表せないというのだ。
「とにかくこちらに運んで来ますから」
「うん。じゃあとにかく緊急手術か」
「そうなるんだね」
「はい、今運ばれます」
こうしてだ。その急患が手術室に送られたのだった。
その日の当直だった。津上理はだ。まだ若く口が悪い男だったが腕は確かだった。その彼がだ。
手術の為に水色の手袋にマスク、それに帽子を身に着けながらだ。そのうえでだ。
看護士達にだ。こう尋ねたのだった。
「で、患者はどんな状況なんだよ」
「はい、それがその」
「無茶苦茶な状況でして」
「どうして生きているのか。その」
「何故ああなったのか」
「何だ?口で言い表せない状況か?」
そんな状況の患者もだ。津上は何度も見てきた。今は真夜中でこうした時間の急患といえばそれこそ交通事故だの酔って喧嘩で大変なことになったのだ。だからだ。
サイコ殺人みたいな状況の絶対に助からない様な患者も何度も見てきた。それでだ。
そうした患者だとだ。彼は覚悟して手術の部屋にいてだ。そこでだ。
患者を待った。するとだ。
そこに送られて来たのは女だった。長い黒髪が波だった艶かしい裸の女だ。歳は三十程であろうか。愛人に持ちたくなる様なそんな女だった。
その女を見てだ。彼もだ。思わず目を丸くさせて言ったのだった。
「何だよ、これ」
「あの、先生はこんな患者さん御覧になられましたか?」
「こんな無茶苦茶な状況の患者さんは」
「私はないですけれど」
「私もです」
「こんなの見たことねえ」
唖然としてだ。答える津上だった。
「何だ?目に乳に臍に太腿に」
「はい、それに局部に」
「あちこちに刺さってますね」
「一体何十本刺さってるのか」
「百本位でしょうか」
「誰がやったんだ」
唖然としながらだ。また言う彼だった。
「ここまで
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