第四章
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「核だな」
「それだよ。それがあるからな」
「だよな。あれはな」
「これも積んでるぜ」
その右手の巡洋艦もだと。兄ちゃんは指で指し示しながら話す。
「多分だけれどな」
「じゃああれもだよな」
俺は左手の遠くに見える黒い潜水艦を指差した。艦橋は船体の随分先にありその後ろにでかいミサイルを発射する場所が幾つもあるのがわかる。
「あれなんかもだよな」
「ああ、何時でも積んでな」
「一斉に撃つんだな」
「国が一つ奇麗になくなるぜ。あれ一隻で」
兄ちゃんはその潜水艦を見て話す。潜水艦は波止場にいるままだ。今は海の中にもいない。
「それこそな」
「だよな。ピストルなんてな」
「ピストルじゃ船だって沈められないしな」
ましてや国なぞだった。言うのも馬鹿馬鹿しかった。
「そういうもんだからな」
「だよな。で、来たな」
「ああ、これだよ」
空母だった。俺達は遂にその前に来た。
でかい、とにかくでかかった。
その空母を見て。俺は言った。
「テレビで観るよりずっとな」
「でかいだろ」
「何だよ、こんなのが海に浮かんでるのかよ」
「ああ、それでな」
「色々積んでるんだな」
「ミサイルだってこれでもかってな」
「積んでるんだな」
「勿論これにも核ミサイルがあるぜ」
本当にピストルどころじゃなかった。
「戦闘機とか攻撃機が搭載してな」
「それでいざって時にはか」
「ああ、ぶっ放すんだよ」
考えてみれば随分物騒な話だった。
「それで一気に決めるからな」
「そうか。何か凄い話だな」
「そうだろ。それがこの空母なんだよ」
「本当にこういうのと比べたらな」
どうかとだ。俺は兄ちゃんに話した。
「ピストルなんてちっぽけだな」
「そうだよな。ピストル持っていきがっててもな」
俺のことは知らない筈だがそれでもだった。兄ちゃんは俺のことを話した。
「核ミサイルで一発だからな」
「消えて終わりだな」
「ああ、蒸発しちまうぜ」
「小さいんだな、本当に」
俺はしみじみとして言った。
「一人が銃持っていきがってもな」
「そうだよな。世の中上には上があるっていうかな」
そんな話をだ。基地の中でした。それが終わってからだった。
俺は基地を出てから懐にあったピストルを取り出してだ。苦笑いを浮かべてこう言った。
「おもちゃだよな。こんなのな」
そのことがよくわかった。ピストルなんてそんなものだった。
けれどそれは捨てなかった。アメリカは物騒だからだ。
それでもそれはそれと割り切ってだった。俺は自分の部屋に帰った。そうしてピストルはしまってそれで。ビールを心ゆくまで
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