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憑依貴族の抗運記
第6話、礼儀正しく見える男
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「なんだ?」

「いえ、金髪の孺子のことです。このまま好きにさせておく、おつもりですか?」

 俺は近くで置物になっているアンスバッハと次席執事をチラッと見た。フレーゲルが何の話をしていたのか分からない。

 アンスバッハはピクリとも動かないが、次席執事のカーソンは如才なく首を小さくふった。どうやら特に目新しい話はなかったようだ。

「馬鹿を言うな。わしが金髪の孺子の増長を見過ごすなどあり得ん」

 これは本音だ。ラインハルトを放置したらこっちの命まで危ない。少なくともフレーゲルと俺はある程度同じ立場だ。

 とはいえそれは一心同体というより呉越同舟という話であり、生贄としての条件と切り捨てる機会が揃えば、容赦なく船から蹴落とせる関係である。

「さすが伯父上。このフレーゲル何でもする覚悟があります。いつでもお申し付け下さい」

 本当に何でもするなら「ラインハルトを侮るな」、 「黙っていろ」と言ってやる。だが、明らかおべんちゃらを兼ねたフレーゲル男爵のいつもの決意表明なので、適当に話を合わせておく。

「今は軽挙妄動を慎む時だが、いずれフレーゲルの力を借りる時が来るであろう。その時には頼む」

「はっ、お任せ下さい」

 フレーゲルは真面目な表情で頷いた。彼は偉大な伯父上(俺)の言い付けを覚えていれば従おうとする美点もある。

 それも怒り狂ったら自制心を失うこと、特定の分野で怒りの沸点が異常に低いことで相殺だが・・・

「ところで、青年貴族達の私兵を艦観式と訓練に参加させる件はどうなっている」

 俺は若干期待しつつフレーゲル男爵に尋ねた。

 無駄な努力という心の奥から湧き出る気持ちを振り払いながら、俺は門閥貴族達の私兵を鍛える作業を始めていた。

 まあ、肝心要のブラウンシュヴァイク一門の私兵ですら、まだ端緒についたばかりであり、側近や側近の部下達の大半は一門の説得にかかりきりになっている。

 ただ、やはり対ラインハルトで共闘出来そうな若手暴走貴族の私兵の強化は早ければ早いほど良い。

 そこで一門外の青年貴族と徒党を組んでいるフレーゲル男爵にも仕事を手伝わせることにした。

 とはいえ今のところ成果は零に近い状況だ。

「ヒルデスハイムを始め何人かに声をかけたところ、艦観式は喜んで参加するとの回答を得ました。ですが訓練への参加には消極的です」

「なるほど、やはり全滅か」

「いえ、グラバック男爵は参加を約束しました」

「グラバック男爵?」

 聞いたことない名前の貴族だな。

「先日、ミュンツァー伯爵邸で数時間ご一緒したフレーゲル男爵の従兄弟でございます」

 カーソンが通信器をいじりながら、緊急の案件という体裁を取って俺にそっと耳打ちしてくれる。三長官への嫌がらせで手柄を挙げたあのグラバック男爵か。

 自慢気に報告するフレーゲル男爵にわざ
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