暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十話 内乱への道 (その3)
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

「……確かにそうじゃの。ヴァレンシュタイン、陛下を此処へお呼びしたのは卿じゃな」

リヒテンラーデ侯の声が応接室に静かに流れた。周囲の驚いたような視線がヴァレンシュタインに集まる。

「そうです。改革を行なうと成れば、これは陛下の勅令が必要となります。ですから陛下には結論だけではなく討議の内容も御覧頂いたほうが良いだろうと判断しました」

なるほど、皇帝が此処にいるのは気まぐれではないという事か。皇帝はどう判断したのだろう。今度こそ、皇帝の器量を測るいい機会かもしれない。

「なかなか見ごたえがあったの。つまらぬ劇など見ているよりずっと面白い。酒が無いのが残念じゃ。国務尚書、そちはヴァレンシュタインの考えに反対か?」
皇帝は笑いを含んだ声でリヒテンラーデ侯に問いかけた。

「理解はしております、しかし……」
「納得は出来ぬか……、人とは難しいものだの」
「恐れいりまする」

「ヴァレンシュタイン」
「はっ」
「帝国は滅ぶか?」

皇帝の言葉は穏やかなものだったが、応接室には緊張が走った。
「このままなら、帝国は滅びます」
穏やかな声だった。皇帝とヴァレンシュタインの二人だけが穏やかな雰囲気を保っている。

「そうか、滅びるか、華麗に滅びるかの?」
「……残念ですが、無様に崩壊すると思います」
「そうか、残念じゃの。華麗に滅びるなら、それでも良かったのじゃがの」

皇帝の言葉に皆驚いたように皇帝を見た。皇帝は驚くようなことも無く皆の視線を受け止めている。

「陛下、滅多な事を申されてはなりません。ヴァレンシュタイン、少しは控えよ」
「良いのじゃ、国務尚書。一人くらい予に言葉を飾らぬ男が居ても良かろう」

国務尚書は困ったような表情で頭を下げた。言葉を飾らぬ、確かにヴァレンシュタインほど正直で嘘をつかない男は居ないだろう。謀略家としてのヴァレンシュタインと誠実なヴァレンシュタイン、どちらが本当の彼なのか……。

「ヴァレンシュタイン、そちは予の勅令がいるのじゃな?」
「はっ。改革を行なうとなれば、ルドルフ大帝以来の祖法を変えることになります。陛下の勅令が必要となります」

皇帝はヴァレンシュタインの言葉に頷きながら国務尚書に話しかけた。
「国務尚書、予の勅令が有れば、そちも迷わずにすむか?」
「陛下の御命令と有れば迷う事は有りませぬ」
「そうか、迷わぬか」

「しかし、その勅令を出せば、多くの不届き者たちが陛下の御命を狙いましょう。臣にはそれを御奨めすることは出来ませぬ」
リヒテンラーデ侯が渋っていたのは策の良し悪しよりも皇帝の身の安全を考えてのことだったのかもしれない。

「そうか、予の命を狙うか……、それも良かろう。予も六十年生きた、蔑まれ続けた六十年じゃ」
「陛
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ