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八神家の養父切嗣
五十九話:Snow Rain
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イフを娘の心臓の真上に突き付けた状態で切嗣は停止した。

「……見事です、主はやて。そしてリインフォースU」

 それは切嗣が最後の最後で娘への愛情から手を止めたのではない。嘘偽りなく彼の体は動くことができなくなっていたのだ。二人を称賛するアインスとは違い何が起きているのか理解できない切嗣は愕然とした表情で自身に降り注ぐ雪を見つめていた。

「これは……この雪が僕の体を―――凍結しているのか」
「いつぞやのお返しや。この雪に当たり続けた対象は次第に体が“凍結されていく”」
「ああ……そうか。これが因果応報というやつか……」

 先頭の中盤からツヴァイが秘密裏に準備していた魔法Snow Rain.(スノーレイン)。凍結効果を持つ雪を降らせていき徐々に相手の体の自由を奪っていく。まるで降り積もった雪が屋根を押し潰すように相手を拘束し最後には完全に凍結封印する。

 かつて永久凍結を行おうとした相手へのお礼とも言える皮肉な魔法に切嗣は自嘲気味に笑う。何の罪もない少女を冷たい棺の中に押し込めようとした人間にはお似合いの最後だ。そう、どこか荷が下りたような顔で切嗣は小さく呟き凍り付いていく己の体を見つめる。

「これで勝負ありや、おとん―――clash(クラッシュ)!!」

 はやてが指を鳴らすと同時に切嗣の体を覆っていた氷が音を立てて砕け散る。魔力も気力も全て使い果たしていた切嗣はどうすることもできずに爆発的なダメージを受け地面へと落ちていく。もはや、地面に衝突して死ぬかもしれないという考えすら浮かばない。否、もう自分では奇跡に手が届かないと理解したために死を望んだ。


「ああ……やっとか」


 やっとこの罪深い生を終わらせられる時が来た。そう呟くかのように切嗣は瞼を閉じ体から力を抜く。後は無造作に地面に打ち捨てられこの生を終えるだけ。そう望んだがそう簡単には終わらせてもらえはしない。自身の体に触れる柔らかな手の感触に気づき目を開けるとそこには物憂げな娘の顔があった。

「そう簡単に死なせはせんよ」
「……降ろしてくれないかい? その……この年で女の子にお姫様抱っこされるのは流石に……」
「敗者に権利はない! …って言いたいとこやけどしゃあないなぁ。昔は散々やってもらったんやし」

 渋々といった感じではあるが地面に降り瓦礫に切嗣を持たれかけさせる。既に彼には立つ体力もまともに座る気力もない。そんな状況に甘んじている自分を嘲笑しながらはやてを見つめたところである違和感に気づく。その違和感が何なのかに気付いたところで今度はなぜ今になってこんなことに違和感を覚えるのだろうと笑ってしまう。


「そっか……もう―――1人で立てるようになったんだね」


 座っているとはいえ娘が自分を上から見下ろし
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