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ランス 〜another story〜
第3章 リーザス陥落
第92話 大隊長 ミネバ・マーガレット
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! ちぃっ!」

 ミネバも、何とか反応が間に合い、防ぐ事が出来たが、一の矢、二の矢と剣撃を矢継ぎ早に攻撃を繰り出した。

「くっ、がぁっ!!」

 防ぎ続けていくが、違和感をミネバは覚え始めた。
 打ち合う事僅か数合後に。その剣は弾けば弾く程、速くなっていってる様に感じるのだ。いや、間違いなかった。

 ミネバとて、百戦錬磨である。

 打ち合えば、その剣を覚え 身体が慣れ、予測と読みで それなりに防ぐ事が出来る様になる。戦闘中に成長をする、と言う訳では無いが、それなりのレベルの相手であっても戦術の修正等を行い最適に動き、打ち負かす事が出来るのだ。

 だが、相手はそれなり(・・・・)ではない。

「(なんだい!? こいつ……、どんどん、速くなる! ……畜生、役立たず共も殆ど殺られたってのか!)」

 完全に後手に回るミネバは、打ち合いの隙間、僅かな隙間に視線を動かし、戦況を確認した。数で勝っていた筈なのに、死屍累々……とまではいかずとも、圧倒されている者がほとんどだったのだ。

 ミネバは完全に死神と鬼の力量を見誤っていたのだ。……そして、目の前の男に対しても。

 だが、それでも十重二十重の策を張り巡らせているのがミネバだ。
 そして、迷う事の無い強大な悪意。力では敵わない相手でも 対応次第でどうとでもする事が出来る。……敵の弱点を見極め、えぐり、つけこむ。そのためには如何なる研鑽も厭わないし、迷いなどある筈も無い。

 町中に逃げ込んだのにも――意味はある。

「正直誤算だったよ。ぼうやの様な男が、いたなんてねぇ」
「オレもだ。……まさか、ここで リーザスでお前に出会うなんてな」
「ほーぉ、あたしの事を知ってんのかい」
「………」

 ミネバの問に対するユーリの返答は……無言の殺気だった。
 
「(成る程、ねぇ…… 穏やかじゃないとは思ってたけど。あたしに限って、そんなもんある訳ないけど)」

 ミネバの口元が、少しだけ吊り上がる。

 突破口(・・・)が見えたからだ。

「だぁぁぁ! ユーリ! 親玉はオレ様が取ると言っただろうが!」

 ユーリとミネバの一騎打ち! 的な空気が漂いだした所で、ランスが乱入してきた。

 正確に言えば、その場は、まだまだ十分過ぎる程乱戦であり、『余裕が出来たから、手を貸そう!』と言える程のメンバーは、リックや清十郎でさえ まだ無かった。ミネバの恐怖支配は、精神の髄にまでしみ込んでいる様で、死に物狂いで かかってくるからだ。……死を恐れていない訳ではない。ただ、死よりも怖いのが、ミネバと言う女だった。訪れる結果は――遅いか、速いかだけなのだ。

「ならさっさと来いランス。……この相手は 早く始末するのに越したことはない」


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