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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十九話 内乱への道 (その2)
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い。

「リヒテンラーデ侯、小官の質問に答えてもらえますか?」
「……」
リヒテンラーデ侯は黙ったままだ。しかしヴァレンシュタインは気にすることも無く言葉を続けた。

「今、帝国が反乱軍を制圧したとします。帝国は新たな領土を得たわけですが、ある貴族が新領土で所領が欲しいと言いました。彼に所領を与えた場合、何が起きると思います?」

「……」
リヒテンラーデ侯は答えない。しかし、侯の表情は先程までの厳しい表情から一変していた。困惑した表情になっている。そして徐々に苦痛に満ちた表情になった。その様子に皆が驚く。どういうことだ?

「ヴァレンシュタイン司令長官、一体何が起きるのだ?」
耐え切れなくなったのか、シュタインホフ元帥が問いかけてきた。ヴァレンシュタインはリヒテンラーデ侯から視線を外し、答えを口にした。

「反乱が起きるでしょう。しかもあっという間に新領土全体に広まると思います」
「!」
驚く皆に対して静かに確かめるような口調でヴァレンシュタインは話しを続けた。

「反乱軍の人間たちは帝国の平民などよりはるかに政治的な成熟度は高いのです。彼らは自分たちの権利を理解しているし統治者の義務についても熟知しています。そんなところに貴族以外は人間として認めていないような人物が支配者として行ったらどうなるか……。火を見るよりあきらかです」

「鎮圧すればいいだろう。何をためらう事がある」
断言するような口調で言ったのはゲルラッハ子爵だった。何処か反発するような口調だが、ヴァレンシュタインに含むところでもあるのだろうか? 先程の貴族にも課税すると言った言葉で反感を持ったのか?

「百三十億の人間が反乱を、暴動を起すのですよ、新領土全体に渡って。簡単に鎮圧などと言ってほしくありません」
「……」

「たとえ鎮圧したとしても、帝国の統治に不満を持った人間は地下に潜るでしょう。そしてゲリラ活動を始める事になります。新領土の治安を維持するためにどれだけの兵が、物が、金が必要になると思います? いずれ帝国はその負担に耐えられなくなるかもしれません。そうなったら……」

「そうなったら? どうなるのだ、ヴァレンシュタイン」
「そうなったら新領土を放棄するしかないでしょう、シュタインホフ元帥」
「!」

新領土を放棄する。その言葉に応接室の彼方此方から溜息が漏れた。有り得ない話ではない、帝国でも支配者の圧政に耐えかねて反乱が起きる事が有るのだ。新領土で反乱が起きないほうが不思議だろう。放棄というのは十分有り得る。

「それを防ぐためには新領土の統治は帝国とは別なものにしなければならないでしょう。その場合……」
「もうよい、止めよ、ヴァレンシュタイン」

ヴァレンシュタインを止めたのはリヒテンラーデ侯だった。何
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