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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十九話 内乱への道 (その2)
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ルラッハ子爵のその言葉にヴァレンシュタインを除く軍人たちが渋い顔をした。戦う事を本職をする軍人にとって財務官僚は天敵だ。何かにつけて金が無いと言い出す。

「今回のシャンタウ星域の戦いは短期間で、しかもオーディンの近くで行なわれました。それ故戦費も思いのほかに少なくて済んだ。しかし、今の司令長官の想定では戦費は膨大なものになる。現在の帝国の財政状況では到底許容できない」

「では、内乱の危険と財政の問題、その両者を解決できれば如何です、ゲルラッハ子爵」
「それなら問題は無い。しかし、そんな事が本当にできるのか?」

確かにゲルラッハ子爵の言うとおりだ。そんなことが出来るのだろうか。しかしヴァレンシュタインの表情は穏やかで困ったような様子は無い。

「出来ます。税制と政治の改革をすればいいでしょう」
「……」
皆、訝しげな顔をしている。税制と政治の改革……、一体どういうことだ?

「貴族に課税します。それと貴族の持つ既得特権の廃止ですね。具体的には農奴の廃止と平民の権利の拡大、それだけで彼らは暴発してくれるでしょう。後はそれを潰せば良い」
「馬鹿な、卿は何を言っている」

震えを帯びた声を出したのはゲルラッハ子爵だった。他の出席者も皆凍りついたように固まっている。少しも変わらないのはヴァレンシュタインと皇帝フリードリヒ四世だけだ。

皆が固まるのも無理は無い。爵位を持つ貴族への非課税、農奴の所持はルドルフ大帝以来の帝国の国是なのだ。それをフリードリヒ四世の前で否定する。一つ間違えばヴァレンシュタイン自身が逆賊として討たれかねない。それなのに平然と言ってのけた……。

「反乱を起したブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯、それに与する貴族は財産を全て没収します。それ以外の貴族にも遺産相続税、固定資産税、累進所得税等を適用すれば十兆帝国マルクを超える金額が国庫に入りそうです。ゲルラッハ子爵、戦費の問題も解決します」
「……」

ヴァレンシュタインはゲルラッハ子爵に語りかけながらも視線はリヒテンラーデ侯に向けている。自然と皆の視線もリヒテンラーデ侯に向かった。そのリヒテンラーデ侯は厳しい眼をヴァレンシュタインに向けている……。

「そのような策を私が認めると思うのか、ヴァレンシュタイン」
低い声だった。何処か怒りを抑えた低い声……。リヒテンラーデ侯は怒っている。

「認めると思いますよ、リヒテンラーデ侯」
何時もと変わらない穏やかな声だった。しかしヴァレンシュタインの視線は微塵も揺るぎを見せずにリヒテンラーデ侯を見ている。

親密といっていいはずの二人が対立している。決裂するのだろうか。何処かでそれを望む自分がいる。この二人が堅密な関係を結んでいる限り手強い。しかし、二人がバラバラなら隙をつけるかもしれな
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