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消えた友
3部分:第三章
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第三章

「おい、北朝鮮は酷いらしいぞ」
「とんでもない独裁国家らしいな」
「反対する者はすぐに処刑されるか強制収容所送りらしいぞ」
「それで食いものも何もないらしいぞ」
「日本よりずっと貧しいらしいぞ」
 時代は移っていた。日本は高度成長の中で豊かになっていた。白川も就職し今では鶏肉も豚肉も食べられる様になっていた。ハムやソーセージ、トンカツもだ。
 店に行って普通に買える様になっていた。そして職場でだ、同僚達の話を聞いたのだ。
「組合の連中は北朝鮮とズブズブだから嘘言ってるみたいだな」
「新聞も雑誌もそういうのが多いらしいぞ」
「北朝鮮は大嘘吐きまくってるらしい」
「しかも日本海で人攫ってるらしいな」
「向こう行った人間は大分殺されたらしいな」
 このだ。最後の話題にだ。白川は反応せずにはいられなかった。
 金のことを思い出したのだ。その北朝鮮に行った友のことをだ。それでだ。
 同僚達にだ。強張った顔で問うたのだった。
「その話本当か?」
「ああ、北朝鮮のことか?」
「そのことか?」
「そんなにとんでもない国なのか?」
 そのことをだ。確めずにいられなかった。金が行った国のことを。
「何もない独裁国家で大勢の人が殺されてるっていうのは」
「ああ、みたいだぜ」
「ソ連みたいな国らしいぜ」
「あのスターリンのな」
「あれ以上みたいだぜ」
 この頃には既にスターリンのことは知られていた。そしてソ連はおおよそだが恐ろしい国だと認識されていた。とはいってもこのこともかなり韜晦する輩がいたが。
 ソ連のことは白川も知っていてとんでもない国だと思っていた。しかしだ。
 北朝鮮はそれ以上だと聞いてだ。顔が蒼白になっていた。その顔で問うたのである。
「噂だよな」
「いや、どうも本当らしいぞ」
「社会党とか嘘言ってるみたいだぞ」
「これな。ちらっと向こうに行った組合のまともなのに聞いたけれどな」
 同僚達は顔を顰めさせながら白川に囁く。
「まるで監獄みたいな国らしいんだよ」
「で、向こうに行ったら差別されて迫害されてな」
「収容所送りになるのも多いらしいぜ」
「日本から来たってだけでな」
「あの国には差別がなかったんじゃないのか?」
 白川は蒼白のままでだ。このことを問うた。北朝鮮は平等な社会だということも看板にしていたのだ。それでこのことを彼等に対して問うたのである。
「それは違ったのか」
「全然逆らしいぜ」
 このことも否定されたのだった。
「何でもな。首領様を頂点として生まれとか思想で階級が出来ててな」
「それに基いて差別されててな」
「日本から戻って来た人は資本主義に染まっていたっていってな
「一番差別されるらしいぜ」
「だからすぐに収容所に送られるらしいぜ」
「じゃ
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