暁 〜小説投稿サイト〜
魔王に直々に滅ぼされた彼女はゾンビ化して世界を救うそうです
第8話『理に適った理不尽』
[2/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


 その先頭に立つ先程の槍を携えた男が、ジークに向けて口を開く。

「すまんジーク、逃した」

「だろうな。ああクソっ、敵を見誤った……!対人戦なら確実にAはあるぞあの野郎……!」

 脳裏に浮かべるのは金髪の魔公。修羅の如き力を振るうあの男は、一騎当千とも謳われる対魔傭兵(かれら)数十人を相手に持ち堪えるどころか、圧倒して見せたのだ。
 ジークをその拳の余波で吹き飛ばした男は、即座に周囲の『対魔傭兵(リ・メイカー)』達の危険度を察し、最も危険となる者から叩き潰していった。ジークもまたそのうちの一人で、中にはジークの様には反応出来ず助からなかった者も居ただろう。ジークの記憶にある戦友達の顔が、幾つか欠けている。

「……ギールとワルズ、バグラは……死んだか」

 槍を担いだ男が、ゆっくりと頷く。その腰には直剣に短剣、チャクラムが吊られており、そのどれにも血が付着していた。男に傷は無く、当然それはそれらの持ち主()()()者達の血だと理解する。
 ジークに支えられつつもそれを見たスィーラが悲痛そうに顔を歪め、メイリアもまた唇を噛みながら肩を震わせた。

「……ここの墓地を使わせて貰おう。残ってたらで良い、死体を運んでやってくれ」

「了解」

 数名の戦士達がすぐに跳んでいく。突如吹いた突風に瞬きをした次の瞬間には、その背はもう米粒の様に小さくなり、やがて完全にその姿は見えなくなった。ジークがそれを見届けると、足に力が入らなくなったスィーラをゆっくりと座らせる。懐から遠信機を取り出し、この街に居ない《彼女》へと繋げる。
 中の魔石へと魔力を通し、遥か彼方に居るであろう存在の声が届いた。

『……ジークか。どうだった?』

 冷めた声が届く。常人が聞けばすぐにでも肝が冷えるような、全てを知っているかの様な声音で、しかし果ての《彼女》はジークに問うた。ジークもまた声音を低くし、冷や汗を拭って答える。

「ヴァリアゾードの防衛は完了。B級の……いや、B+って所か。そのレベルの魔公が来てたけど、逃がした。すまない」

『ふむ、仕方あるまい。そちらに送った人員では、そのレベルはどうにもならんだろう。何人死んだ』

「三人、《神話の遺品》は全て回収した」

『よくやった。全てこちらに送れ、処理して再配給する』

「了解。任務を続行する」

 簡素にして淡白な問いに答え、指示を受ける。遠信機を仕舞い、改めて辺りを見回した。傷一つ負っていないとはいえ衣服をボロボロにしたスィーラに上着を渡して背負い、奥で座り込んだメイリアに視線を向ける。
 メイリアもまたその視線に気付いて立ち上がろうとし、足に力が入らない事に気づいて苦笑しながらジークを手招きする。ジークは促されるままメイリアに
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ