第十六話 神戸を後にしてその十二
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「忙しいな」
「練習時間が長いのかな」
「ああ、長いな」
実際にとだ、龍馬は優花に答えた。
「中学の時よりずっとな」
「朝練もあって土日もね」
優花も言う。
「部活があって」
「走ってばかりでな」
「確かに忙しいよね」
「そうだな、そのせいか」
「だろうね、けれどね」
「これからはな」
「暫くぶりで三人で楽しもうね」
優花は笑顔のまま龍馬に言った、そしてだった。
そうした話をしながらだ、龍馬は夕日を見た。夕日は赤く次第に大地の中に沈もうとしていた。もう昼の強い日差しはない。
その夕日を見ながらだ、龍馬はこんなことも言った。
「このお日様もな」
「どうしたの?」
「長崎のお日様と同じなんだよな」
「お日様は何処でも一つだよ」
優花はすぐに龍馬に返した。
「そうだよ」
「それはそうだな」
「そう、それこそ地球の何処でもね」
「じゃあ神戸と長崎に別れてもな」
それでもとだ、龍馬は優花にあらためて告げた。その夕日を見ながら。
「こうして同じお日様見ような」
「そうだね、別れ別れになってもね」
「同じものを見られるんならな」
「同じものを見ようね」
「そうしような」
こうしたことも話してだった、龍馬はまずは自分の携帯で母親に今日は優花の家に行くと話した。泊まるとまでは言わなかったが。
するとだ、母は電話の向こうで息子に言った。
「優花君今日よね」
「ああ、今日でな」
まさにとだ、龍馬も答えた。
「長崎に行くからな」
「そうよね、だからなのね」
「お別れのパーティーするから」
「それに出るのね」
「いいよな」
「行ってらっしゃい」
すぐにだ、母は息子に告げた。
「これが最後なんでしょ」
「ああ、時々長崎に行くけれどな」
「それじゃあね」
「行って来ていいんだな」
「今言った通りよ」
優しい声でだ、母は息子にまた答えた。
「むしろ行かなかったら怒ってたところよ」
「友達と最後のお別れだからか」
「そう、行って来てね」
「わかった、じゃあな」
「行ってらっしゃい」
言葉で息子を送り出した、そして。
龍馬は電話の後でだ、また優花に言った。
「じゃあな」
「お母さんいいって言ってくれたね」
「御前が聞いた通りな」
「そうだな、じゃあな」
「よし、行くか」
「僕の家にね」
「優子さんが料理作ってくれてるんだな」
龍馬は優花にこのことを確認した。
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