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真田十勇士
巻ノ四十八 鯨その十二

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「岩屋や」
「岩屋ですか」
「そこで、ですか」
「落ち合う」
「そうされますか」
「うむ」
 まさにと言うのだった。
「わかったな」
「岩屋といいますと」
「島津家が目指しているとか」
「あの城に」
 既に博多でも話になっている、それで十勇士達も言うのだ。
「そこに集まり」
「そのうえで、ですな」
「島津家の領内に入りますな」
「うむ」
 その時からというのだ。
「よいな」
「畏まりました」
「では二十日後岩屋で会いましょう」
「あの地で」
「そうしようぞ、皆に九州の地図とそれぞれの国の地図を渡す」
 ここでだ、幸村は懐から何枚かの地図を出して言った。
「持って行くがよい」
「その地図は」
「まさか」
「うむ、実は上田を発つ前に父上から頂いておった」
 そうした地図だというのだ。
「九州に行くのならと申されてな」
「何と、大殿がですか」
「殿にお渡しして下さったのですか」
「その地図達を」
「当家は独自に地図も集めておる」
 ここで幸村は言った。
「そう父上に言われた」
「して九州もですか」
「各国のものも含めて」
「全体の地図もですな」
「大殿はお持ちですか」
「それをお渡ししてくれたのじゃ」
 その地図をそれぞれ拡げた、そこには確かに九州の地形があり細かい地名までその中には書き込まれていた。
 その地図達を観てだ、十勇士達は唸って言った。
「しかもですな」
「九州の地図は何枚もあります」
「では事前にですか」
「映してもいましたか」
「実は信玄公が作らせていたものでな」 
 幸村はこの種明かしもした。
「来るべき時に備えてな」
「武田家が九州に攻め入る」
「その時にですか」
「密かに真田の者達を送り込んで調べさせてもいたという」
 信玄の命でというのだ。
「それで作られたものでな」
「今は我等がですか」
「使わせて頂く」
「そういうことですな」
「左様、思う存分使うのじゃ」
 まさにと言う幸村だった。
「わかったな」
「はい、では」
「お言葉に甘えまして」
 十勇士達はその地図をそれぞれ受け取った、幸村も一枚の九州の地図と彼が調べる筑前のそれを手に取った。そしてだった。
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