巻ノ四十八 鯨その九
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「しかし方言があるな」
「その方言が、ですか」
「違うのですな」
「薩摩等では」
「それが問題ですか」
「そうじゃ、その土地その土地で方言があるな」
幸村は十勇士達に問うた、彼等がいる博多にしても様々な言葉が飛び交っているが九州の言葉が最も多い。
「この九州にしても」
「九州の訛りは違いますな」
「信濃や甲斐とは」
「無論近畿とも違います」
「北陸や関東とも」
「東海とも、ですな」
「そうじゃ、九州の訛りは独特じゃ」
他の地域と比べてもというのだ。
「その中でもとりわけじゃ」
「薩摩、大隅、日向は」
「この三国は」
「そこが違う、だからそこには充分以上に気をつけねば」
それこそというのだ。
「怪しまれるぞ」
「そして怪しまれれば」
「その時は、ですな」
「切られる」
「そうなりますな」
「そうじゃ、島津家には用心せよ」
その本来の領地に入ればというのだ。
「わかったな」
「ではその三国に入るには」
「どうすればいいか」
「それですな」
「その時にどうするかですな」
「そうじゃ、一体どうするかじゃ」
まさにというのだ。
「その時がな」
「ううむ、では三国に入るのは」
「先にしますか」
「自然とそうなる」
三国に入るのは後になることはだ、幸村もそうだと返した。
「それはな」
「やはりそうですか」
「九州の南にありますし」
「この博多から行くにはですな」
「一番最後になりますな」
「だからまずは他の六国を調べるが」
それはというと。
「御主達十人はそれぞれ二人ずつに別れてじゃ」
「そして一国ずつですか」
「そうして調べる」
「そうせよというのですな」
「うむ、そして三国はな」
その薩摩、大隅、日向はというと。
「一旦まとめて入るか」
「そうされますか」
「慎重に」
「そうされますか」
「そうする、ここはな」
まさにというのだ。
「まずは他の六国じゃ、いいな」
「では」
「まずはそれぞれ別れましょう」
「二人ずつ」
「して殿も」
「うむ、拙者は一人で行く」
十勇士達を分けてだ、幸村はというのだ。
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