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世界最年少のプロゲーマーが女性の世界に
18話 鈴戦
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 ―――甲龍の武装は龍砲と双天牙月の2種類。セシリアさんのような多角的な攻撃、一夏さんのような一撃必殺を持っているわけじゃない。でも……っ!

 単純だが完成されたコンビネーションを攻略するのは難しいと鬼一は過去の経験から理解している。だが、それは難しいだけだ。鬼一は、自分なら必ず攻略の糸口を見つけ出せる自信があった。しかし、

 ―――この人の怖さの本質は武装などの表面的な部分じゃない。

 鬼一からすれば甲龍の武装は厄介だが、それよりも厄介なのは操縦者である鈴なのであった。それも、鬼一からすれば最悪と言わしめるほど。

 ―――……一夏さんと違って近接戦のスキルが高いのも嫌だけどそんなことよりも、攻撃的な性格なのに、具体的なリスクリターンを考えている時と考えてない時の行動が別物すぎることだ。何をしてくるかがイマイチ分からない。

 鈴の感性は独特なものだと鬼一は判断していた。映像を見た際、セオリーから逸脱した行動やそれまでの有利を捨てるような行動があるのを確認している。故に鈴の思考を読み取れない。ヘタをすれば、どれだけ優勢であってもあっさりと覆されそうな怖さが鈴の中にある。

 ―――そのくせして動きに安定感もあるし、IS人口の多い中国で僅か1年で代表候補生になるほどだ。そんな環境で戦ってきた以上、間違いなくメンタルも強い。となるとミスはまず望めない。

 セシリア戦や一夏戦の時と違いメンタルを崩してミスを誘発させる戦術は取れないこともないが、効率が悪すぎる。かと言って楯無との戦いのように新たな隙を作り出していいのかも微妙な線。
 現段階で鬼一は明確な勝算をまだ組み立てていない。だが何をされたら敗北が確定するのは既に理解している。

 即ち、鈴に守りを固められるということだ。

 鈴の攻撃力は脅威に尽きる。だが鬼一は鈴の守備力こそが勝敗に直結するものだと考えていた。身体能力の高さとISの操縦技術の高さから来る回避能力。他の第3世代ISと違って燃費の良いISの甲龍。常軌を逸したスタミナ。大崩れのしないメンタル。全てがその守備力の一端を物語っている。本人が意識していないだけの問題だった。もし、本気で守りに入られたら鬼一はその守りを崩すことは出来ないと判断した。

 つまり、鬼一が勝つための最低限のラインは鈴に『攻撃と守備の比率を変えさせないこと』だ。言い換えれば、ほとんど鈴に一方的に攻められることで守りを意識させないこと。

 守備に入られたらまず敗北。かと言って攻めさせ続けて耐え切れるかどうかも定かではない。

 ―――こちらが勝つためにはその攻撃力を上回ることじゃない。重要なのはどうやってその攻撃力を捌くか。そして、鈴さんにディフェンシブな立ち回りをさせずにどのタイミングで仕掛けるかだ。

 
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