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世界最年少のプロゲーマーが女性の世界に
18話 鈴戦
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。こちらの不利などはこの際どうだっていい。そもそも、僕はこの戦いにそんな展開にさせる気はない。多分、鈴さんも同様だろう。念のための確認でしかない。

「鈴さん、一つだけいいでしょうか?」

「なによ?」

 鈴さんの緊張感漂う声が向けられる。どうやら無下にするつもりはないみたいだ。ならば手早く終わらせよう。

「……貴女に協力するのはやぶさかではありません。だけどこの戦い、僕が勝ってもいいんですよね?」

 僕のその言葉に鈴さんが嬉しそうに声を漏らす。

「……私に勝とうっての? 上等よ。死に物狂いで来なさい。私は一切の手加減をするつもりはないわよ。アンタの試合を見れば、そんな甘えは絶対に咎められる。それくらいは理解しているわ。
 月夜 鬼一は間違いなく筋金入りの怪物よ。はっきり言って本国の代表候補生やその下の連中じゃアンタを倒すことは叶わない。アンタは人の油断や甘えに対して容赦なく見つけてそれを突くからね。たかが男と見くびってるあいつらにアンタは倒せないわ」

 鈴さんの鋭い視線が向けられる。

 IS戦で良いと思えることはこうやって相手の戦意を直にぶつけられるということだ。これが僕の心に熱が宿らせる。
 ふつふつと血液が沸騰する錯覚を覚える。早く、試合が始まって欲しい。お互いの熱が冷める前に、この熱を目の前の戦いにぶつけたい。

 鼓膜を震わせるほどの開戦の合図がアリーナに響き渡る。

―――――――――

 アリーナ全体に戦いの始まりをコングが鳴り響く。しかし、鬼一と鈴の両者は僅かに距離を離すだけでまだ始めない。

 だがそれも一瞬。

 鬼一の視界から鈴の姿が消えた。いや、一瞬だけブレたと思ったら次の瞬間には鬼一の目前にまで踏み込んでいた。それがかろうじて鬼一が理解できたことだ。

 逆手に構えた夜叉でとっさに鈴の一撃を受け止めた。が、鈴に強引に弾き飛ばされる。ビリビリと左腕に痺れが走る。それだけで鬼一は鈴との力量差を、IS以前の根本的な差を理解した。身体能力というステージではどうあがいても叶うことはないと。

 ―――……単純な身体能力だけならたっちゃん先輩にも張り合えるレベルか……!

 弾き飛ばされた鬼一は空中で身体を反転させ、衝撃を逃がしながら地面に着地する。
 表情は涼しいものであったが、鬼一は内心で舌打ちを零す。

 ―――速い、映像以上の速さに感じるのは鈴さんの動き出しが極めて速いからだ。これに振り回されると後手に回され、いずれは何も出来なくなる。しかも僕の防御が明らかに遅れた。タイミングを合わせないと。

 ひとつひとつの動作に無駄がなく、始まりと終わりまでの間隔が極めて短い。鬼一はそれを踏まえた上で『自分の中』を修正する。鈴のテンポに呼吸を合わせるように。
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