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世界最年少のプロゲーマーが女性の世界に
18話 鈴戦
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『守る』はとても幼いものよ。現実を知らない子供のそれでしかないわ。綺麗事と言ってもいい。それでもさ」

 小難しいことはどうでもいい。そんなことを考えるのは後でいくらでも考えればいい。自分は、自分だけの信念に従ってそのとおりに生きてみせるという強い意志を感じる。

「鬼一は知ってるでしょ? 理想は叶えることの出来ない夢物語で、現実は残酷なものだって。誰もがぶち当たる厳しさなんだってさ。最高の理想よりも最善の現実に手を伸ばしたほうがいいって」

 そう、理想は理想でしかない。近づくことはあっても理想が現実になることはできない。誰も彼もが挑み続けて成功しなかった。それは歴史が証明しているのだ。

「でも1個だけこれには誤りがあるのよ」

 僕は無言で続きを促す。

「その理想を現実に変えられるなら、それが何よりもいいのよ」

 ……確かにそうだ。だけど、それは―――。

 反論をしようと思えばいくらでも反論できるものだった。だけど、口が動くことを否定している。

「少なくともあいつはそれでいいのよ。いつか、壮絶な過ちを犯すかもしれないけど、それで諦められるような理想ならそこで諦めればいい。だけど、理想を現実に変えられるような何かがあいつにはあるのよ。きっと。私はそう思える」

 そこまで喋っていた鈴さんは自嘲するような苦笑を浮かべて、肩を竦めた。

「まあ、私自身に何が出来る? って聞かれたらあんまりないんだけど」

 一瞬だけ顔を伏せて、力強く顔を上げた。

「でも、あいつの踏み台くらいにはなれるでしょ? あいつを強くするための踏み台くらいにはさ。たくさん見て、感じて、実行して、苦しんで、それでも這い上がる手助けは出来る」

 ……でも、それは。いや、これは鈴さんが選んだ道なのであれば衝突しない限り僕が否定する必要はどこにもない。

「私自身あんま良い人生を送ってるわけじゃないから、あいつに言葉で教えてやれることなんて正直ないんだよね。私、口はあんま得意じゃないし」

 まぁ、確かに言葉で伝えるのは不得手そうではあるが。だから身体で教えるということか。

「厳しいけどあんたの言うことは間違いじゃないさ。でも、今はあんたやセシリアにあーだこーだ言われながらでいいのよ。誰もが最初っから能動的に動けるわけじゃないしね。まあ、早い方がいいのは間違いないけど」

 そこまで喋って鈴さんは済まなさそうに1度だけ目を伏せた。

「……私の今していることがアンタにとって傍迷惑なことも理解しているわ。それに関しては本当に申し訳ないわね。ひたすらに身勝手な理屈をこっちは振りかざしているんだから。ぶっちゃけ一夏に少しでも強くなって欲しいからあんたを利用している、って言われたら否定もできないし」

 ……
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