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世界最年少のプロゲーマーが女性の世界に
18話 鈴戦
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あの方の力を借りているような人がそのようなことを言わないで。そしてこんな戦いを止めれなかったのに、鈴さんまで巻き込んでいる貴方に、これ以上の言葉を吐く資格はありませんわ」

 一度だけ深呼吸。激情を落ち着かせるように。

「……鬼一さんを巻き込んだ……いえ、それは正しくありませんわね。最後に選択したのはあの方なんですから」

 結局のところ、最後の選択を決めるのは当事者なのだ。そして鬼一はその選択をした。それを第三者が咎めることは出来ない。

「……でも、本来無関係なはずの鈴さんまで巻き込んだのは愚行でしかないです。そして一夏さん? この戦いで鈴さんのメッセージも聞き取れないというなら、貴方は本気で救いがありません」

 2人の戦いは激しさを増していく。それを見ているとセシリアは胸が痛くなる。強烈なまでの光りを感じさせ、どうして自分がそこに立っていないのか? それだけでも怒りが湧いてくる。
 そして嫉妬するほどに、2人は一夏に戦いを通して語りかけている。特に鈴は相手の鬼一以上に一夏に語りかけているようにもセシリアは感じていた。

 ―――強くなれ。

 セシリアの言葉に一夏はただ困惑することしか出来なかった。

―――――――――

「おおおおおおおっ!」

「はああああああっ!」

 鬼一と鈴の雄叫びがアリーナに木霊する。
 鈴はともかく、鬼一はこの戦いにおいて自分自身にはほとんど何の意味もない。戦うことに理由は必要だと考える鬼一は、自分が戦うための理由が自分の中に存在しない以上、集中力が深まることは本来ありえない。

 セシリア・オルコット戦では自身がいた世界を汚されたが故に。

 織斑 一夏戦では何も知らないガキに真実を否定されたが故に。

 程度に差はあるが、間違いなく鬼一はその時最高のパフォーマンスを発揮している。そのための明確な理由が存在するから。

 しかし、この戦いに鬼一に理由は存在しない。最後に選択したのは鬼一だが、見方を変えれば巻き込まれていると言っても間違いない。それを理解しているにも関わらず鬼一はこの戦いを受け入れた。

 カリカリカリカリカリカリカリカリ。

 耳障りな音が脳内に鳴る。

 鬼一の集中力は徐々に研ぎ澄まされたものに変化していく。それに伴い『ズレ』が大きくなっていることを果たして鬼一は理解しているのだろうか? その余りにも不可解な感覚に。

 鬼一の変化に鬼神が追いついていない。鬼神の状態を示してくれる情報が視界の片隅に流れてくるが、そのほとんどが鬼神にダメージが蓄積されていると警告を発するものであった。

 しかし鬼一にそれを理解している余裕などない。目の前の相手から一瞬でも意識を逸らせば敗北することを知っているからだ。

 ミサ
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