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世界最年少のプロゲーマーが女性の世界に
18話 鈴戦
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です」

 残酷なまでに襲いかかってくるもの。間違っていると分かっていても覆せないのが現実だとセシリアはいう。

「考えている時間もない、力をつける時間もない、探している時間もない、あまりにも少ない選択肢の中からわたくし達は正解だと思える選択をするんです。何かを犠牲にして、身勝手な理屈を振りかざしてです」

「……っ」

 反論したかった。だけど、なんの重みもない言葉を吐き出せるはずもない。

「別に織斑さんがどんな答えを出そうとわたくしには何の関係もありません。ですが先達者から言わせて頂ければ、覚悟だけは済ませておいたほうがいいです。選択肢があるのにそこで何も出来ないことが最大の罪だからです。失ってからじゃ遅いのですわ」

 その覚悟がなんなのかは一夏は理解したくなかった。それを受け入れてしまえば自分は。

 セシリアは1度だけため息を零して、視線を鬼一に戻す。

「……鈴さんにそのことを話したのですね?」

「……ああ」

「鈴さんはなんと?」

「……俺のこの気持ちは鈴からすれば鬼一に対して劣等感を持っていることの現れ、らしい。そしてそれには意味がないんだって」

 自分は何も出来ていないのに、二人目の男性操縦者は成し遂げていることへの劣等感。

「鬼一の強さを知って、自分の弱さを知って、その差に俺は……」

「……馬鹿ですか貴方は?」

 容赦なくセシリアは一夏の言葉を遮る。話すことは話したのだからここから黙っていようかと考えていたが、その言葉は無視できるものでは到底なかった。

「あの方の強さに触れて? 自分の弱さに触れて? その差を知ったから貴方は心が弱い方に流れている?」

 別に他人の強さに触れようが、自分の弱さに触れようが、その差を知ろうがそんなことはどうでもいい。セシリアからすれば赤の他人の言葉でしかないのだ。

「冗談も休み休みに言ってくださいまし。あの方はそれこそ自分の全てをかけて挑み、治すことの出来ない傷を負いながらも戦い抜きました。いえ、今も戦っています」

 本来、鬼一も迷っているのだ。だがその迷いが邪魔になることを鬼一は理解している。迷って何も出来ないくらいなら鬼一は戦うことを選ぶだろう、それしか出来ないこと、それでしか守れないものも存在するから。

「劣等感を抱くことは無意味? 違います。貴方は本来なら劣等感を抱くことそのものが間違っていますわ。その劣等感を抱いていいのは何らかの形で戦うことを覚悟して、努力して、戦い続けて、その先を見た人間だけでしょう」

 視線は決して一夏に向けない。もう一夏を見ることもできない。ここで見てしまえば平手が飛んで行きそうだったからだ。

「まだ何もしていない。何も成し遂げていないどころか、自分の成長の為に
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