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世界最年少のプロゲーマーが女性の世界に
18話 鈴戦
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で、自分の望むものが全てを守れるならそんな幸福はないでしょう」

 きっとそれは最上の未来。だけど、手を伸ばしても絶対に届くことのない奇跡。

「ですが」

 淡々と、粛々とセシリアは語る。出来ることなら鬼一以外にこんなことを話したくなかった。ある意味で弱音以上のそれを。

「人である以上、その理から逃げ出すことは絶対にできません」

 摂理、と言い換えても良かった。人である以上、絶対に逃げることは出来ない不変のルール。

「どれだけ力をつけても、どれだけの人と協力してもそれは叶うことのない幻想です」

 そこで初めてセシリアは言葉を切る。

 そして初めてセシリアは一夏に視線を向けた。ただその視線に宿る感情を一夏は読み取れなかった。

「鬼一さんも随分と優しいですわ。本質を伝えないで逃げ道を用意してあげるなんて」

 だけど一夏は、セシリアが自分に対して笑っているような気がした。

「……どういうことだセシリア?」

「わたくしは形や舞台が変わったとしても『戦い』というのは逃れられないものだと思っています。ISにしてもあの方の舞台であったe-Sportsでもです」

 虚無的にセシリアは言葉を続ける。その中に宿っている感情を一夏は分からない。それも当然であろう。彼は人としての当然なその感情を知らないのだから。セシリアの言葉がどんな感情から生み出ているのか分からないのだから。

「あの方は何も犠牲にしたくないなら逃げ出せばいいと仰ったんですよね? わたくしから言わせてもらえればその逃げるということにも、他の犠牲は避けれないと思っています」

 鬼一がどういう考えでそれを口にしたのかはセシリアには分からない。本当に優しさからなのか、それとも逃げる方が楽なのだと考えているからなのか、本心は鬼一の中にしかない。だけど、

「自分が逃げ出せば別の誰かがその穴埋めを行うために新しい犠牲が生まれると思いますし、逃げる為にまた何かと『戦わなければなりません』。そして逃げ出したその先でもまた何らかの戦いが始まりますわ」

 ベクトルは変わってもどうあがいても戦いから抜け出すことは出来ない。

 それが両親を亡くして戦い続けてきた少女の答えたった。

「逃げたその先に楽園があったとしても、その楽園に辿り着く過程で、もしくは自分からでは見えないその裏でまた何かが犠牲になるかもしれません。それともその先にある戦いの伏線なのかもしれません」

「……そんなことが!」

 セシリアと鬼一の共通の考え、それは『戦う以上は必ず犠牲が出る』ということ。そしてセシリアはその考えにプラスして『同時に戦いは絶対に避けられない』とも考えている。

「ええ、私たちも間違っていると思っています。ですがそれが現実なん
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