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世界最年少のプロゲーマーが女性の世界に
18話 鈴戦
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理解できないが、許容できるものではない。

 瞬間、戦いの幕が再び開かれた。

―――――――――

「……織斑さん、貴方はこの戦いをどう受け取っているのですか?」

 視線はアリーナで戦っている鬼一と鈴に向けられたまま、セシリアは重い口調で言葉を発した。

「鈴さんが鬼一さんにこの戦いの話を持ちかけた時、貴方はその心当たりがあるように思えました。そして貴方は困惑しながらもそれを止めようとしなかった」

 その重く響く言葉の中に感じられるのは果たしてなんだったか。苛立ち、怒り、少なくとも決して明るい感情なものではない。もっと薄暗いものなのは確かだった。
 一夏はセシリアの突然の言葉に驚いたように視線を横に向ける。感情を感じさせない表情と、暗い炎が宿ったその瞳に薄ら寒ささえ感じさせた。その瞳に一夏の背中が冷たくなる。

「……あの後、貴方と鈴さんがどんな会話をしたのかは存じ上げません。が、ですが少なくとも私から見れば貴方が発端のように感じます。貴方は一体何を考え、鈴さんに伝えたのでしょうか?」

 淡々と、平坦な言葉でセシリアは続けた。言い逃れは許さないと言外に言っているようにも思える。

「……なぁ、セシリア?」

 一夏の視線がセシリアの横顔に当てられる。セシリアもその視線を感じているはずだが決して向けようとしなかった。その横顔が冷たいものに変化していることに一夏は気づかない。

「……」

 無言ではあったが、先を促されているように一夏は感じた。

「……戦いで、何も犠牲にせずに何かを救うことは可能だと思うか?」

「……突然何を言っているんですか?」

 一夏の突然の言葉にセシリアは困惑が混じった声を発した。しかし、すぐに口を閉ざす。一夏のその言葉が答えだということに気づいたからだ。

「鬼一に俺は言ったんだ。クラス代表を決めるあの戦いの日に。あいつは何かを守るために戦えば必ず犠牲が出るんだって。何も犠牲にしたくないなら逃げ出せばいいって。俺はその言葉に納得できなかった。いや、したくなかった。それは間違いなんだって」

 思い出すのは更衣室での鬼一とのやり取り。

「何かを守るために戦うのにそれで他の何かが犠牲になることに俺は納得できないんだ。それはおかしいことなのか?」

「……わたくしは貴方と鬼一さんが何を話したかなんて具体的なことは知りません。ですがわたくしは鬼一さんと同じように、何かを犠牲にしてでも守りたい大切なものが存在します」

 あくまでも視線は鬼一に。一夏に向けることはない。

「そして、鬼一さんもわたくしも一度はそれを夢見ました」

 2人が互いの理解者となり支えになったあの日。2人はそれぞれ一度は目指したそれを語った。

「何も犠牲にしない
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