暁 〜小説投稿サイト〜
世界最年少のプロゲーマーが女性の世界に
18話 鈴戦
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削られたしね。おまけに片方はオジャンだし」

 軽い口調で呟いているがその言葉は確かな怒りが宿っていた。その怒りは鬼一ではなく、鈴自身に向けられたものであったが。
 頭では分かっているつもりだった。目の前の相手は決して侮って倒せるものではないと。
 理性では分かっているつもりだった。リスクを取らずにして目の前の相手を倒せるはずがないと。

 荒れた呼吸を繰り返す中、鬼一は鈴の様子を観察する。

 あれだけ派手に吹き飛んだのだから相応のダメージを受けているはずなのだが、目の前の相手からは予想よりもダメージを受けているようには見えない。いや、下手したら本当にダメージを感じていないのではないか? そんな風にすら鬼一は思った。

 甲龍の状態を確認するように鈴は右手に持った双天牙月を2度、3度と何度か振る。その姿は余りにも滑らかなもので、右スパイクアーマーの無残さに反して甲龍そのものには損傷はほとんどないようだった。しかし、シールドエネルギーを大きく削れたのは間違いない。

 鈴と甲龍本体にダメージがなければ技量と体力、そしてメンタルでどうにでも衝撃砲1門くらいなら十分にカバーが効く。鈴自身のスペックは十分に高いのだから。

 ―――……たった1回で龍砲に合わせてくるなんてね。いや、合わせるどころかこっちにカウンターまでお見舞いしてきた。つまり鬼一はあの時の1回、自分の絶対防御1回分で私がどんなタイミングで龍砲を使うのか理解したってこと? 冗談、どんな対応力よ。

 あまりの衝撃に頭が痛かったが、鈴は自分がなにをやられたのか冷静に振り返る。同時に衝撃砲は今後の展開ではほとんど使ってはならないことを悟った。迂闊な使い方をすればそれを利用されてしまうと。

 ―――いや、違うわ。龍砲の使い方が間違っていただけで、龍砲の持つアドバンテージを失ったわけじゃない。あいつはあの時の1回で私の龍砲の使い方を見抜いて逆手に取った。それなら使い方を変えればいい。それも、あいつが『対応』できない使い方でね。

 空気が変わったことを鬼一は実感。

 両者の距離は100メートル以上離れていた。

 鬼一にとってはこの距離を有効利用しなければならない。次、距離を詰められてしまえば試合の敗北すらも見えていた。
 夜叉を格納し羅刹を展開。ミサイルポッドもレール砲の弾薬はまだ十分にある。先程はミサイルポッドの使い方が悪かったが、次は確実に当てれるタイミングで使用すればいいだけのこと。

「……行くわよ」

 鈴の小さな宣言。

 チリチリと身体を侵食する業火の世界を感じる。なぜ、それを感じたのが鬼一には理解できない。

 ―――。

「……う、るさいっ! 引っ込んでろっ!」

 呪うような鬼一の小さな言葉。それが何なのかは
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