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第一章
愚君の片思い
実に変わった君主だった。それは太子だった頃からだ。
ピョートルは常にだ。こう周囲に言っていた。
「ロシアもプロイセンの様になるべきなのだ」
「プロイセンにですか」
「あの国にですか」
「そうだ。あの方を見てどう思う」
その妙にひしゃげた、奇妙な顔の目を羨望で輝かせてだ。そして周囲に言ったのである。
「フリードリヒ陛下を」
「それは何といいますか」
「その」
「ロシアの方ではないですから」
「どうも」
「女帝陛下はあの方を毛嫌いしておられる」
この時のロシアの主はエリザベータ女帝だ。彼女は徹底した女性蔑視主義者でありポーランドを挟んではいるがロシアの西にいてしかもバルト海で睨み合うプロイセンの主フリードリヒ大王を忌み嫌っていた。しかしその彼女とは違いだ。
彼は異様なまでにフリードリヒを尊敬してだ。常に彼への崇拝の念を語っているのだ。
そして今もだ。こう言うのだった。
「だが私が違う。私が皇帝になればだ」
「皇帝になられたその時にはですか」
「プロイセンとですか」
「無二の盟友になる」
こう宣言するのだった。
「そしてロシアは何処までもプロイセンについていく」
「そうされますか」
「我がロシアをその様に導かれますか」
「必ずな」
これが彼の考える彼が皇帝となった時のロシアだった。彼は正妻であるエカテリーナを一切無視して愛人と共にいるばかりでだ。しかもだった。
おもちゃの兵隊の閲兵式をベッドの上で行いはしゃび火事を見てはけたたましく笑いネズミを捕まえて処刑しては転げていた。その彼を見てだ。
周囲はだ。眉を顰めさせて囁き合った。
「あの方が皇帝になると大変だぞ」
「とても正気とは思えない」
「幾つになってもおもちゃと遊んでおられる」
「しかも奥方様は放ったらかしだ」
「プロイセンにロシアが?そんなことをしたら大変なことになるぞ」
彼のプロイセン崇拝はだ。特に否定されていた。
「プロイセンは我がロシアの西を阻む厄介者だ」
「共にトルコと戦うオーストリアの宿敵ではないか」
「盟友フランスとも仲が悪くなってきているしな」
「あのフリードリヒ王の下プロイセンが大きくなると後々厄介になるのではないのか?」
「それで何故だ」
「あの方はああものめりこんでおられるのだ」
誰もが。ロシアにいる者はだ。
彼がおかしいと思っていた。しかしだ。
ピョートルのプロイセン崇拝、いや狂いは止まらずだ。プロイセン王の肖像画を飾りだ。
それに接吻をしてだ。うっとりとして言うのだった。
「私が皇帝になれば貴方に誠意を見せましょう」
こう言う程度だった。しかしだ。
ロシアはこの時園プロイセンと
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