暁 〜小説投稿サイト〜
世界最年少のプロゲーマーが女性の世界に
17話
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「一夏っ!」

 自動ドアが開き、そんな元気な声を発しながら鈴は現れる。そんな元気な姿を見て、昔の鈴の姿と重なり、変わっていないことに安心感を抱けた。中学時代の無邪気な姿が脳裏に浮かぶ。
 右手にはスポーツドリンク、左手にはタオルが握られている。そして、そのまま手渡された。俺の為に持ってきてくれたのか?

「鈴、サンキュー。ふぅ……」

 今もなお溢れる汗がとにかく邪魔くさい。顔全体をタオルで包み、何度か上下させて汗を拭い取る。ありがたいことにドリンクもあった。

「変わっていないわね、一夏。全然若いくせに自分の身体のことばっかり気にしてるとこ」

 自分の健康を気にするのは当然だろう? 今のうちから不摂生に身体を慣らしてしまうと、後で取り返しが付かなくなる。その時に痛い目を見るのは自分と家族、千冬姉に面倒をかけるのはゴメンだ。唯でさえ今も面倒をかけているのに。これ以上、なんかあると死にたくなる。

「後でそれで泣くのも嫌だからな。千冬姉を困らせたくないし」

「……一夏、少し変わった?」

 その言葉に手が止まる。別に変わったとは思っていない。変わりたいとは思っているけどな。あれだけの大口を鬼一に叩いたんだ。弱さを見せつけられて、感じさせられて変わろうと思えなければ嘘だ。弱いことが悪とさえ、最近は思えるようになってきた。弱いままじゃ、きっと、俺は何も出来ない。

 答えはまだ見つからない。そのことに心が少し重くなる。だからと言って諦めることは出来ない。

「……別に変わっちゃいないさ」

 上手く言えた気はしなかった。この時の自分の顔がどんなものだったか、正直知りたくない。
 目の前の鈴は俺の様子を一瞬訝しんだが、すぐに表情が切り替わる。ホントに、相も変わらずコロコロと表情が変わる奴だな。今はすごいありがたいが。

「一夏ぁ、私がいないのは寂しかった?」

 鈴がにやにやとした笑顔とどことなく見透かすような瞳で俺を覗き込んでくる。その視線に心がざらつかされた。なんだ、昔と同じ目なのになんでこんな俺は落ち着かないんだ。鈴はどこか昔と変わったのか? 

 鈴を最後に見たのはいつだったっけ。確か中学2年の冬の頃だったはずだ。まだあれから1年くらいしか経っていないのに、もの凄い時間が経ったような気がした。あの頃は毎日がひたすらに楽しくてやかましかっただけの日々だったのに、今の鈴からは女の子らしさが微妙に感じる。……多分、鈴は成長したんだ。だから女性らしさを感じたのかもしれない。

 羨ましいよ鈴。俺はまだあれから何も成長していないよ。なのに昔みたいに馬鹿な言葉が何も出てこない。……本当に救えない。

「……そう、だな。こうやって鈴と会えて嬉しいと思っているから、思っている以
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