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忘れ形見の孫娘たち
15. 和之、みんなに煽られる。
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わない! お前も実家に戻れる! みんなハッピーになれるじゃねーかッ!」
「いや、でもうちって在宅勤務は認められてましたっけ?」
「心配すんな! 俺が人事部と部長に認めさせるから!」
「セキュリティの問題とか……」
「そんなもん俺の得意分野だろうが! どうとでもしてやるわ!!」

 僕は課長がけっこう好きだ。そしてウマもあう。

「だから辞表は却下! お前は在宅で社員続行! いいな!」
「……はい」

 その理由が今日なんとなく分かった。この人は爺様みたいだ。高圧的でエネルギッシュ。爺様よりもちょっと言葉遣いが辛辣だけど……。

「ぶふっ……」
「なんだよ?」
「ああ、いえ……。課長、ありがとうございます」
「おう。ぶっちゃけな。俺がお前を手放したくないんだ。それは分かってくれ」
「はい」

 というわけで、課長の鶴の一声……いや迫力的にはヒグマの咆哮だったけど……によって、在宅勤務という形で僕の社員続行が決定。今までは企画書作ったり折衝に行ったりといった機会も多かったが、今後はゴリゴリのプログラミングの鬼になることが出来る。結果的に良い方向に転がったのかもしれない。僕の在宅勤務がうまいこと行けば、僕の実家を拠点みたいな扱いにしてもいいのでは……という話にもなったようだが、僕にその気はまったくない。

 休暇が終わらないうちに自分のアパートの片付けをして引っ越しをする。元々荷物は少ない部屋だったから荷造りも楽だ。使わないものはすべて捨ててしまってもいい。商売道具のパソコンと着替えがあれば事足りる。少ない荷物を宅急便で送り、会社から支給された仕事用のノートパソコン……元々僕が会社で使ってたやつだけど……とその他諸々をバッグに入れ、僕はそのバッグを片手にアパートを出た。

「……おつかれさま。今までありがと」

 さらば大学時代からお世話になった僕のアパート。大家さんに言われたとおり鍵を郵便ポストに入れ、踵を返す。スタスタと軽快な足取りで、僕はその場をあとにした。

 役所で転出届を提出した後、新幹線とローカル線を乗り継いで実家に戻る。

『今どのへん?』
「あと一時間ぐらいで着くかな。荷物は届いた?」
『届いてるけどなにこれ……パソコンばっかじゃん……』
「爺様みたいな道楽とはわけが違うんだよ。本職のプログラマーさんのスゴみを爺様にわからせてやるッ」
『ぶふっ……はいはい』

 LINEで連絡を入れた後、ローカル線に揺られながら一時間……この一ヶ月の間のことをいろいろと思い出していた。爺様の逝去からはじまった奇妙なコスプレ集団とのふれあい……ぼくの貯金をすっからかんにしてまで行った、その子たちのための二回目の告別式……そして、きっと夢だったんだろうけど……爺様との再会。いろいろと騒がしい一ヶ月
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