16話
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ているとは思わなかった。空中に浮くポールを如何に早く、時には飛んでくる弾丸を避けながら触りに行くという一種のレースゲーム感覚のトレーニングだったが、タッチしたポールの数に大差をつけられて負けるとは思わなかった。それだけ鬼一の機動はムダが少なくて早いんだろうな。それだけ努力しているとも言えるが。
「一夏さん、僕とセシリアさんの総評についてですが、全部データに纏めて送信しましたので後ほど確認してください」
遠くから聞こえる鬼一の声に、俺は視界の隅に現れたメールのアイコンを開く。その中に2人のコメントが纏められたテキストデータが確認できた。確認できたので2人に手を振る。
「では僕らは先に戻ります。2人ともお疲れ様でした」
鬼一は別れの言葉を述べるとセシリアと一緒にISを展開し、同じピットへ向かって飛翔する。しかし、あの2人仲いいよな。最初の頃が遠い昔のように感じる。
「……何をしている、早く私たちもピットに戻るぞ」
「なぁ、箒。いつ鬼一と話すつもりなんだ?」
俺のその言葉に箒は黙り込む。都合の悪いことは黙るか、もしくは逆ギレするか、最終的には竹刀を振るが、こういうことは長引かせるのは良くないと思う。主に箒のメンタル的に。部屋で話した次の日に箒は浮かない表情だった。その原因が鬼一のことなのは考える必要もない。
「……」
ただ、箒の気持ちも分かる。俺はあの時、ああは言ったが実際鬼一がどう思っているかなんて鬼一本人に聞かないと分からないことだ。箒もそう考えて鬼一と直接話そうと思っているらしいが、今までのやりとりから箒は自分が鬼一に嫌われていると思っている。そのこともあって箒はまだ鬼一と話すことが出来ていない。
「箒、前も言ったけどお前が良ければ俺が―――」
俺が最後の言葉を言い切る前に箒は首を横に振った。自分の家族がしたことなのだから自分から話すのが筋、だと箒は考えている。箒は今まで束さんのことで様々な声を投げかけられただろうし、その中には理不尽なものもあったらしい。だけどその中には家族を亡くした人まではいなかった。
家族を亡くしたそんな鬼一からどんな言葉が出てくるかが分からないから箒は怯えているんだ。現に今日の食堂の時とかは、内容は話せなくても約束くらいは出来たはずなのに鬼一に話しかけることも出来なかった。
「……わかったよ。難しいなら言ってくれよ協力するからさ。じゃあピットに戻ろうぜ」
そう箒に声をかけて2人でピットに戻った。
「……っ」
白式の展開を解除する。瞬間、膝を折りかけるほどの疲労が全身に襲いかかる。関節がギシギシと軋む音がして、視界がぼんやりと霞む。今日は早めに切り上げたから少し楽だ。
箒は解除した後、しばらく立ち尽くしていたが思い出したよ
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