暁 〜小説投稿サイト〜
世界最年少のプロゲーマーが女性の世界に
16話
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合ってる訳じゃ……」

「……そう、だな。付き合っている訳じゃないな。だけど、大切な幼馴染だよ」

 周りの熱の籠った視線に理解できない、いや、違和感を感じているのか訝しげな一夏さんの表情。一夏さんの言葉に鈴さんはとても複雑そうな表情を浮かべていた。『大切』で嬉しそうな表情になり、『幼馴染』の部分で一瞬怒りの表情を見せ、最後はそれが混ざった表情になる。……傍からみればちょっと面白い。ひどい話だが。

「どうした鈴?」

「……な、なんでもないわよっ! ……私だってアンタのこと、大切だと思っているわよ……」

 ちょっと顔の赤い鈴さんがそっぽ向きながら怒鳴る。ただ、その声とは裏腹に表情は怒っているようにはとても見えなかった。僕から見れば、だが。照れ隠しなんじゃないかと思う。

 ……最後の言葉はホントに、注意していないと聞こえないくらいに小さな声だった。だけどそこに篭っている感情は、僕に全部分かるものではなかったが、鈴さんだけの大切な『思い』なんだと感じた。

「『大切』な幼馴染、だと……?」

 大切、を強調した疑問の声で篠ノ之さんは一夏さんに聞き返す。最後の言葉は聞こえていないみたいだ。

「……ん、と、だな、箒が引っ越したのは小4の終盤で、鈴が来たのは小5のすぐの頃だよ。そして中2の終わりに中国に戻ったから、こうして顔を合わせるのは大体1年ぶりくらいだな」

 一夏さんは視線を天井に彷徨わせて思考する。

 そうか、となると篠ノ之さんと鈴さんは直接顔を合わせたことはないんだな。

「鈴、こっちが箒だ。篠ノ之 箒。小学の時に少し話したけどさ、小学校の幼馴染で、通ってた道場の娘だよ。千冬姉とも顔見知りだ」

「ふーん、そっか」

 ちらりと、鈴さんは視線を篠ノ之さんに向ける。ちょっとだけ、鈴さんの表情は嬉しそうなものだった。反対に篠ノ之さんの表情は少し落ちだけ込んだものであった。

「初めまして。鳳 鈴音よ。これからよろしくね」

「……ああ。こちらこそ」

 ……この2人の対照的な表情の意味がよく分からなかったが、多分、分かった。『大切』。この単語が鈴さんの時はあったけど、篠ノ之さんの時はなかった。その差がこの2人の表情を分けているんだろう。

 ……一夏さんの様子を見る限りだと、鈴さんの関係を話すときは慎重に言葉を選びながら口にした感じだが、篠ノ之さんの時は無意識に、反射的に言葉が出たようにも見える。ある意味では篠ノ之さんの方が近い距離にいるようのに僕は感じた。

「初めまして鳳さん。自己紹介が遅れて申し訳ありませんでしたわ。わたくし、イギリス代表候補生のセシリア・オルコットです。お見知りおきを」

「ご丁寧にどうも。改めて自己紹介させてもらうわ。中国代表候補生の鳳 鈴音よ。
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