16話
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の一点に関しては譲る気はさらさらないですね。あの試合で勝算はあることは知れましたし、あとはそれを形にするために努力するだけです」
唯でさえ負けているのにメンタルで負けてしまえば勝てないということを鬼一は過去の経験から嫌というほど理解している。だからこそ、このような言葉が出てくるのだ。
同時に、その言葉が人によっては毒となるものでもあるが。
「諦めることはいつでも出来るけど、諦めないことはいつでも出来るわけじゃないですからね」
―――――――――
私は生徒会室で自分のノートパソコンの前に座りながら、その情報に視線を走らせる。生徒会室には私以外に誰もいない。情報の内容は鬼一くんに関する情報だった。彼の生い立ちから今に至るまで詳細に調べ、彼の持つ違和感を生み出している原因を探っていた。彼はあまりにも歪んでいる。
それを最初に感じたのは織斑 一夏くんとの試合だった。あの時はあきらかにおかしい、いや、壊れていたと言っても良いだろう。あの子がなんの躊躇いなく人を傷つけることが考えにくいし、それにあんなふうに自分から『死』に近づいていくことが信じられなかった。あの子は両親を失っているのだから、本来、そういった『死』を忌避するはずなのに。にも関わらず、
―――自分を追い詰めるように、自分を壊すように、自分を殺すように、ううん、自分に罰を与えるような戦いなど私は見たことがない。あれだけISを調べているあの子がISの持つ危険性を知らないはずがない。一歩間違えれば大惨事になりかねないことを。厄介なことに本人はそれを覚えていない。
守るための戦い、彼の言葉から該当するのはこれだろう。自分のいた世界を、自分が救われた世界のために、守るために彼は戦うことを選択した。
だが、それは本当なのだろうか? その時の彼の言葉は間違いなく本心、それは間違いないと言える。だけど、実際にはそんなのは関係ない、と言わんばかりの無謀な行動の数々。
守るためには、1つの大前提の元に成り立たなくてはならない。
それは自分の身を自分で守ることだ。それが出来て初めて他を守ろうとすることが出来る。自分が死んでしまえば守ることは出来なくなってしまう。だが、彼はなんの躊躇いなく自分の身を切り捨てる。それがどれだけ異常なことか。一つの模擬戦に対して命を賭け金として差し出すことなどありえない。いや、あってはならない。
つまり、究極的に言ってしまえば彼は自分の命に対して執着心がないのだ。とまでは言い過ぎだろうか?
そして、何かの理屈や確信があってのことではないが、彼が見せた3つの顔はそれぞれ独立しているように私は見えた。突拍子もないことだと分かっているのだが、だが、どうしても私の中で普段の顔とあの時見せた顔が重ならない。比喩でもな
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