16話
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うにタオルを俺に放り渡しながら口にする。
「……一夏、身体を冷やすなよ。汗をあれだけ流したんだから風邪を引くかもしれんぞ」
幼馴染の貴重な優しさに涙が出そうになった。普段は暴言や暴力の大安売りだが、部屋で話した後から少しずつ箒はこういう面を見せ始めている。
タオルを渡したあとの箒はいつものように髪を結い直す。その姿と動作にいつもの箒らしさが戻ってきて安心する。
そういえば、この後鈴が来るとか言っていたな。早く準備しないと。
―――――――――
IS学園には、当然だがIS専用の整備室が存在する。アリーナごとに用意されているその場所は本来であれば、2年生から使用できる専門クラス『整備課』のための設備だ。
ピットでも補給や簡単な整備などは可能だが、ISという精密機械の塊はどうしても専門的な整備を必要とする。操縦者に合わせてIS側で最適化されると言っても、それは十分な整備を行い、万全な状態でこそ真価が発揮されるのだ。
その整備室の一つで鬼一は空中に映し出されたディスプレイを確認しては手元のキーボードを叩く。その手つきはぎこちなく、時折手元を確認しながらキーを叩いている。鬼一は専用の椅子とモニターを使わず、行儀はお世辞にも良いとは言えないが地面に座ったまま鬼神の調整を行っており、鬼一の周りにはISの整備に関する書籍や書類が乱雑に散らばっていた。
鬼一の周りにはセシリアはいない。鬼神の調整を行うということで先に戻ってもらったのだ。流石に自分の都合に付き合わせるのはいくらなんでも申し訳ない。セシリアは不満そうな表情ではあったが。
ディスプレイに流れてくるプログラム郡や表示されているグラフを見て、鬼一の精神は削られていく。いくらなんでも初心者が1人でISの整備や調整を行えるはずがない。鬼一も知らなかったとはいえ、甘く見ていたと認めざるを得なかった。これは自分じゃどうしようもない現実だと。
余程イラついているのか頭をガシガシと掻き毟る。舌打ちも溢れそうになるがそこは堪えた。
「……あー」
ゴロン、と地面に転がる。冷えた地面が熱くなった身体と頭にはちょうど良かった。
そもそも、なぜ鬼一が鬼神の調整を行っているか?
それはスラスターの速度調整に関することだ。楯無との模擬戦がきっかけで新たな戦略を思いついた。
チェンジオブペース。鬼神の機動力と攻撃手段の豊富さを活かした戦略。先人らが積み重ねてきた資料にはまだこの手の分野を開拓している人間はいない。
ISそのものの世代は現在第3世代機だが、ISが世代ごとに大きく変化していくように戦略やセオリーにも世代が存在する。
具体的なことを言うと『ブリュンヒルデ』織斑 千冬が示した1つの最強戦略、それが近接戦
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