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真田十勇士
巻ノ四十八 鯨その五

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「何の意味もない」
「武家の棟梁となっても」
「身内で殺し合ってばかりでは」
「その様な有様では」
「家が滅びる」
 断言だった、幸村の今の言葉は。
「源氏の様にな」
「ですな、確かに」
「源氏は実際に滅びましたし」
「あの様になりますね」
「現実として」
「まだ平家の方がよい」 
 滅び多くの悪名を残しているこの家の方がというのだ。
「平家は清盛公の後身内で殺し合うことなかった」
「ですな、一度として」
「中で色々揉めることはあったとしても」
「それが殺し合いになることはありませんでしたな」
「最後の最後まで」
「それだけで違う」
 それも全くという言葉だった。
「源氏の様なことをしてはならぬ」
「家が滅ぶ」
「その為に」
「そうじゃ、中で争ってはならぬ」
 またこう言った幸村だった。
「やはりな」
「では頼朝公は誤っていた」
「そうなりますか」
「その通りじゃ」
 苦い顔での言葉だった。
「だから源氏は血が全く絶えたのじゃ」
「そして以後は幕府は北条家が取り仕切ることになった」
「そうなったのですな」
「乗っ取られたと言うべきか」
 北条家が執権として幕府を取り仕切る様な状況になったことがというのだ、将軍は都から迎え入れてすぐに都に戻り次の将軍を迎える状況になったのだ。
 そのことについてもだ、幸村は言った。
「全て源氏の血が絶えた為じゃ」
「では当家もですな」
「源氏の様になってはならぬ為に」
「内で争ってはならぬ」
「そういうことですな」
「その通りじゃ、何故島津家が強いか」
 これから向かうこの家のことも話すのだった。
「それは家の中がまとまっていることも理由にある」
「四兄弟がですな」
「それぞれ一つになっており」
「そして家臣団もまとまっている」
「だからですな」
「島津家は一つじゃ」
 そう言っていいまでにまとまっているというのだ。
「それもあり強いのじゃ」
「ですか、この壇ノ浦で平家は滅びましたが」
「源氏もまた滅んだ」
「それは家の中で殺し合っていたが為」
「そしてそれをしてはならない」
「断じて、ですな」
「そうことじゃ、この壇ノ浦には来たかった」
 一度は、というのだ。
「そして来られたことを嬉しく思う」
「平家の者達がここで眠っていますな」
「この海の底で」
「そうなっていますな」
「安らかに眠って欲しい」
 幸村は心から願った、彼等の冥福を。
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