Side Story
少女怪盗と仮面の神父 22
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ピッシュの果樹園)が在り、其処を北に越えれば、やや東寄りでテーブルから落ちかけた二つ目の菓子山と背凭れ(大森林を囲む山)の間に束縛されたイルカ(アルフィン)が居る。彼女と一緒に縛られていた例の指輪は、それを狙っていたシャムロックへの伝言だ。
『取り戻したければ、此処へ来い』と。
そう。「奴ら」はシャムロックの正体と、海賊に押し付けられた『依頼』の内容を知っていた。そうでなければ、こんな暗号を残した後で斧を投げて寄越したりはしなかった筈。
やはり「奴ら」の一撃には「ミートリッテに高い回避能力が備わっている」という前提があったのだ。
もっとも、完全に此方の不意を衝いていた事や、相当強いと感じた青年ですら声を上げる他に身動き一つ取れてなかった事、たまたま避けられただけで、青年の声が聞こえてなかったら間違いなく即死していた事などを考慮すれば、本当に「生きていようが死んでいようがどっちでも良かった」のだろうなぁとは思うが。
もしあの場面でシャムロックが死んでいたら、意味を失くした罠は放置され、アルフィン達は他国に売られたか……最悪、言葉に表すのも悍ましい暴行の末、殺されていた可能性が高い。
こうして思い至れば、今日ほど己の身体能力に感謝した日はなかった。
勿論、声を掛けてくれた青年にも深く感謝している。差し上げた葉物野菜と干し肉に上乗せして、高級魚のフルコースと金箔入りのお酒を酔いどれになるまでたっぷり振る舞いたいくらいだ。
無事に生還できて、アルフィン達が殺されなくて、本当に……本当に良かった……。
本来無関係なアルフィン達を巻き込んでしまった時点で、「良かった」と思って良い資格なんか、とっくに失くしているのだけど。
さて。
『依頼』遂行中のシャムロックが標的にされていたとすると、問題は当然「海賊達こそ「奴ら」じゃないか」に戻ってしまうのだが……敵の正体なんぞ推測したところで今更なので、この手の疑問は指輪を見たと同時に頭の隅で消去した。
今必要なのは、敵が誰かで悩む時間じゃない。そんなものはもうすぐ判ることだ。
生き延びたシャムロックに用があるなら、姿を見せれば多分、相手が勝手に説明してくれる。ハウィスや青年が教えてくれなかった事も全部、コイツらに訊いてスッキリすれば良い。
だから。
目的地に着いたミートリッテは、躊躇わずに声を張り上げた。
「女の人達、これを見て私を捜してたのよね? 随分潔く引き下がったなぁと思ってたけど、やっぱり、あれからずっと村中を探し回ってたのかしら。だとしたら危なかったぁー。早い段階で私が盗んでたら、絶対追い詰められてたわ。女心だけは敵に回しちゃいけないって、なんか世界の真理っぽくない? ねぇ。もしかしてこれをくれたのって……「同業者故の」同情か何か?」
白い月光が射し
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